――現在のVivaldi Technologiesについて教えてください。

von Tetzchner氏: 本拠地はノルウェーにあり、アイスランドと米国にもオフィスがあります。このほかにも各地に点在しており、社員は約35人。約20人が直接ブラウザ開発に関わっており、サーバーの運用やシステム管理などサポート、そして営業とマーケティング、人事がいます。

Vivaldi Technologiesに参加するほぼ全員のメンバー

分散した環境で仕事を回すために、年に3回、"ミートアップ"として合宿のようなものをやっています。6月の合宿では、スタッフが家族を連れくることができるので、仕事と遊びを一緒にできます。従業員の福利厚生は大切だと考えており、3カ所のオフィスすべてにHR(人事)担当を配置して従業員のケアをすると同時に、大きなファミリーとしてボランティアの方々にも気を配っています。

我々を助けてくれるボランティアは数百人規模で、みんなパッションをもってVivaldiを作ってくれています。たとえば翻訳。誕生して間もないのに、すでに50以上の言語に翻訳されています。Soprano(注6)としてテストをしてくれる人、ユーザーからの質問に答えてくれる人などがいます。

コミュニティサイト「Vivaldi.net」には、Blogやフォーラム機能が用意されている。Vivaldi.netはブラウザ「Vivaldi」が誕生する1年以上前から公開されていた

注6:Vivaldiのテストを行うボランティアのチーム。日本人の参加者もいる

――Tetzchnerさんは1992年からWebに関わり、Webとブラウザの歴史を見てきました。現在のような状況を予想していましたか?

von Tetzchner氏: ブラウザについては、シンプル化というトレンドを懸念しています。ブラウザは以前、もっと多機能でしたが、「平均的なユーザー」にフォーカスしようという考え方が広まっています。ですが、私にとって「平均的なユーザー」などというものは存在しません。

ある機能の利用が少なければ削除するという考え方でいくと、全ての機能を削除できてしまいます。ユーザーごとに利用する機能はそれぞれ異なります。ですから、シンプル化というトレンドはあまり良いものではなく、これを変えたいと思っています。

昔、PCで何かをするにはWindowsを使わなければいけませんでしたが、現在はあまりOSを意識しなくなっている。これは大きな変化で、Windows、Mac、Linuxなどれを選択しても、だいたいやりたいことができます。これは、Webのおかげです。Webは制限から我々ユーザーを解き放ち、イノベーションを起こしました。これを今後も継続させたいですね。

Vivaldiは小さな会社ですが、OperaのときのようにWeb標準の進化を推進していきたい。現在Vivaldiにそのようなリソースはありませんが、将来的にはと思っています。

――ありがとうございました。

日本でのVivaldiの反応はとてもポジティブだったと語るvon Tetzchner氏。「日本はVivaldiの利用が多い国の一つで、米国やドイツなどに次ぐレベルです。日本の人々は、この秋葉原もですが、技術に精通しており、興味を持っていると思います。新しい技術を試してみることにあまり抵抗がない人が多いですね」