他社はそう簡単に参入できない

ファンデリーのビジネスモデルにおいて、異彩を放つのがカタログ「mealtime」(ミールタイム)の存在だ。ミールタイム(薬局向けは「ミールタイム ファーマ」)を手に入れられるのは医療機関や保健所、介護施設、調剤薬局など、全国で合計約18,000カ所。年に4回、75万部ずつ発行しており、掲載メニューは各号240前後だ。メニューは毎号半分ほどが入れ替えになり、ユーザーが飽きにくいよう工夫している。

ミールタイムとミールタイム ファーマ。カタログを作成する際のコストも実はクライアントからの広告出稿料でまかなえてしまう

お弁当メニューのほか、表紙には主治医や食事制限の指示、血液検査結果の数値などを記入できる欄を設けていたり、食生活を振り返れる健康管理カレンダーのページがあったり、医師や栄養士が患者に栄養指導を行う際のツールとして使える。

これこそがファンデリーの強み。病院などにとっては「無料で使える栄養指導ツール」なので、ミールタイムを置いてもらうのも配ってもらうのもコストはかからず、ファンデリーはお弁当が売れても設置機関に何も支払う必要がない。かつ、約10年かけて開拓してきたネットワークは他社にとって参入障壁となる。

「担当栄養士」のカウンセリング

ミールタイムを持つ阿部氏。ミールタイムには管理栄養士・栄養士のプロフィールも載っているが、「親近感を持ってもらうため」とのこと

管理栄養士・栄養士がカウンセリングするという点も見逃せない。現在、会員数(累計)は約18万人いるが、そのうち「定期コース会員」は6,772人でこれまでも堅調に推移してきている。定期コース会員になると担当の栄養士がつき、継続的に栄養アドバイスをしてくれるのだ(定期コースでなくても管理栄養士・栄養士に相談できるが、担当はつかない)。

血糖値やコレステロールといった数値を改善するという明確な目的があるため、定期コース会員のリピート率はもちろん高い。加えて、目に見えるかたちで効果が出るため(もちろん個人差はあるが)、ユーザーのモチベーションも上がる。病院で食事制限の指示が出されても、肝心なのはそれを守れるかどうかだ。「お弁当を売ったらそれでおしまい」ではなく、管理栄養士・栄養士がトータルでサポートしていくため、医療機関からの信頼も厚い。

1日に何百件もの栄養相談を受けるというファンデリー。阿部氏は「これまで患者さんとダイレクトにやりとりしてきたデータが蓄積されているのも強み」と語る。「栄養相談を受けている件数は数ある企業のなかでもトップ」(阿部氏)であり、その声を生かしたメニュー開発は得意分野だ。たとえば、シャープの「ヘルシオ」シリーズとのコラボレーション。ウォーターオーブン向けに、糖尿病や高血圧といった疾病ごとのメニューを共同開発するなど、そのノウハウを活用している。