Samsung Electronicsのフラッグシップスマートフォン「Galaxy S7」「Galaxy S7 edge」がグローバルで売れに売れている。一部報道では、前モデルのGalaxy S6/S6 edgeと比べて初月の売上は20%増で、すでに1,000万台を突破したとの見方も出ている。
日本では5月10日にKDDI、そして11日にドコモがGalaxy S7 edgeの発売を明らかにし、いよいよ国内でも最新モデルが利用できるようになる。今回、韓国・水原市においてGalaxy製品担当者に、Galaxy S7 edgeの魅力を改めて聞いた。話を聞いたのは、商品企画のSeo次長と、カメラ開発担当のKang主席、Kim主席。
Galaxy S7 edgeは、S6時代に省かれたいくつかの機能が復活。防水防塵機能とmicroSDカードのサポートは、S7人気の立役者と言えよう。防水は日本市場では人気だが、Seo次長はグローバルでも「日常的に持ち歩くデバイスで、手を洗ったりするし、雨の日も使用できるというニーズは多くあった」と話す。
「企画段階で、ユーザーの声を重視した」とSeo次長。ユーザーがどういった機能を望んでいるか、さまざまな調査によってニーズを把握。microSD、防水防塵など、技術的な制約をクリアして、ユーザーのニーズに応えたのがS7だと言う。
こうしたニーズの調査は、従来も実施していたとのことだが、S6でmicroSDや防水性能を省いたのは失敗だったと認識しているということだろう。それでも、S6のデザイン性やプレミア感は維持しながら、必要な機能を改めて搭載してきた点は底力といった感じだ。
グローバルではGalaxy S7とS7 edgeの2モデルがあるが、国内ではGalaxy S7 edgeのみの投入となる。キャリア側の要請なので、Samsung側に選択肢がないとはいえ、残念なところではある。Seo次長は、S7とS7 edgeについて、「S7 edgeを使う人はトレンドに敏感な方が多い」と所感を述べた。
S7とS7 edgeではディスプレイサイズなど細かな違いもあるが、「プレミアムスマートフォン市場はニーズが非常に細かくなっている」とSeo次長。細かなニーズに応えるために、ディスプレイサイズやバッテリサイズ、edgeディスプレイといった機能を変えて、S7とS7 edgeを投入したと話す。
異なるチップセットも採用されているが、「地域ごとにネットワーク環境が異なるため」としており、性能は同等だとSeo次長は説明する。
Samsungは、スマートフォンをハブとして各種アクセサリをコントロールする戦略で、例えば全天球カメラの「Gear 360」、「Gear VR」などをリリースしている。今回もGear VRをサポートしているが、同製品の接続端子はmicroUSBであり、USB Type-Cをサポートしていないという指摘もできる。
Seo次長は、技術的なハードルではなく、「USB Type-C対応のアクセサリーが市場に十分出回っていないと判断した」という。USB Type-C対応によって、「ユーザーが不便に感じてはいけない」として、アクセサリ製品のエコシステムと連携して、市場の動向を見ながら対応を進める考えだ。
Seo次長は明言しなかったが、USB Type-C対応に関しては、コストの問題もあるだろう。S7/S7 edgeは、グローバルでの本体価格がS6よりも下がっている。ニーズに応える機能を追加しつつ、要所要所でコスト削減を図っていると見受けられるところもあって、バランスの取れた製品に仕上げた印象がある。
「ユーザーにとって最適な値段はいつも悩んでいる」とSeo次長。それを考慮した結果としているが、やはりプレミアムクラスとはいえ、S6/S6 edgeクラスの価格は難しいという判断が働いたようだ。
S7/S7 edgeの機能として、Samsungが最もアピールしているのはカメラ機能だ。「世界最強の一眼レフ スマホ」として自信を見せる。最大の特徴が撮像素子(センサー)だ。通常は画像を作るために使われる画素(フォトダイオード)を2つに分割して、位相差AFセンサーとして動作させる仕組みで、Samsungでは「デュアルフォトダイオード」と呼んでいる。
技術としては、キヤノンのデュアルピクセルCMOS AFと同じ仕組みで、キヤノンがデジタル一眼レフに搭載したのに対し、スマートフォンサイズの小さなセンサーで実現したのが特徴。「独自開発した」(Kang主席)ということだが、キヤノンとの違いはセンサーサイズだけのようだ。
Samsungはカメラ事業部の解体とスマートフォン事業部への統合を経ており、そのため、「ユーザーがカメラに求めるものを、カメラの専門家が同じチームになったことで出せるようになった」とKang主席。とはいえ、「常にユーザー視点で何が必要なのかを考えていた」として、今回は「暗所で撮れる、AFが速い」というニーズが多かったため、そこに焦点を当てて開発したという。
iPhoneを始め、各社カメラ機能に力を入れており、Huaweiがライカと協業したことも話題になっているが、Kang主席はユーザーのニーズを常に探して、それに応えていくというスタイルで開発に取り組む考えを示す。
画質面では、新開発のセンサーに加えてさまざまなチューニングを加えており、例えば料理モードでは色味のチューニングやアウトフォーカスの処理などで料理をさらに美味しく見せるような工夫をしているそうだ。
画質評価を行うDxOのDxO MarkではiPhoneを超える評価となり、ブラインドテストでも高評価だったとのことで、カメラの画質に自信を見せる。
新しいデュアルフォトダイオード技術は、2つのフォトダイオードをAFセンサーとして使い、撮影時はそれを1つのフォトダイオードとして画像を生成する仕組みで、画素数としては2440万画素だが、記録画素数は1220万画素になる。この動作には「高速処理が必要になる」としており、ある程度のスペックは必要だという。そのため、今後すべての機種に搭載するかどうかは分からないとKang主席。
AFが高速になり、暗所のAF性能が向上したとは言え、記録画素数が1220万画素という点で、画素数競争としてはアピールが弱くなる。画素数が少ない代わりに画素サイズが大きくなったことで、単純に画質には有利に働く部分で、「高画素」アピールができない代わりに「高画質」アピールができる。現時点では販売が好調だが、カメラの画素数について市場の評価によっては、デュアルフォトダイオードを継続しないという選択もありうるだろう。
Galaxy S7/S7 edgeは、旧機種からさらに完成度を高めつつ、ユーザーのニーズを拾い上げ、ユーザーニーズを追求した製品と言えそうだ。その一方で、ユーザーニーズを読み違えると失敗を招く可能性も含まれている。現時点で市場の評価は高く、日本市場でもどの程度受け入れられるか、期待度の高い注目製品であることは間違いないだろう。