スマートフォン登場以後、大手携帯電話会社の新商品発表会といえば、毎年、スマホの新製品が発表され、注目されてきた。ところが、このところその様相が変化しているのだ。NTTドコモが11日に都内で開催した2016年夏の新商品発表会では、スマホの存在感がほとんど感じられないまでになってしまった。
主役の座から落ちたスマホ
ドコモが開催した2016年の夏モデル発表会。例年であれば、少なくとも10機種は新モデルが発表され、発表会でも、各機種の特徴が紹介されてきたものだが、今年はこれまでとは大きく異なっていた。
新たに発表された新モデルはわずか7機種。製品ごとの特徴も淡々と紹介され、新モデルを期待した人たちにとっては物足りなさしか感じられなかっただろう。それもそのはず、従来はスマホの新機能・性能が著しく、説明するに値するものが多かったが、近年は機能、性能ともに大差がなくなっている。どのメーカーのスマホを取り扱っても、スマホの取扱機種で携帯電話の契約を大きく伸ばせるという時代はすでに終わってしまっている。
4月下旬に行われた2015年度の決算発表会でも、ドコモは2016年度のスマホ販売数の見通しについて弱気な数値を予測。2015年度比142万台減の1402万台とした。この水準は2014年度の1460万台を下回るもので、ドコモでは「タブレットをはじめとした2代目需要はまだあるが、スマホの機能や性能は一定のところまで来ている」(ドコモ幹部)とし、弱気な見通しの理由について説明している。
このあたりを掘り下げると、総務省が昨年9月から進めてきた携帯電話の値下げ議論も関係する。スマホの購入補助が携帯電話料金の値下げを阻害する要因になっているとして、実質ゼロ円でのスマホの販売が実質的に規制されたのは記憶に新しいところ。そのあたりも考慮すると、買い替え需要は減退することになり、ドコモとしても、弱気な見通ししか示せないということだろう。
これらのことからすると、新商品発表会で新モデルの役割はもはやサブ的な位置づけになる。取材案内のタイトルも、「NTTドコモ 2016夏 新サービス・新商品発表会」となっており、いつの間にか"新サービス"と"新商品"という言葉が倒置されており、主役が入れ替わっていたことも付記しておきたい。