米Appleは、同社が提供する「Apple Music」の全体的なリニューアルを計画しているという。2015年6月のローンチ以来、同サービスへの加入は1年を経たずして1,300万件を突破する勢いだが、いまだAppleの期待する水準には届いていない。6月のWWDCにも発表される見込みのリニューアルでは、新機能をアピールしつつ、インターフェイスの刷新でよりユーザーの興味を惹くのが目的だとみられる。
同件はBloombergが関係者の話として報じている。Beats Music買収を機にスタートしたApple Musicのプロジェクトだが、サービス開始を経ても従来のダウンロード型サービスと新しいストリーミング型サービスのビジネス的な融合は果たせておらず、両者をより良い形でユーザーに提供しつつ、オンラインラジオサービスを拡充させるのがリニューアルの狙いだという。最終的に、サブスクリプション型サービスであるApple Musicへの加入者をより増やしていくことが目的だ。
Apple Musicの展開にあたってはApple内部でメンバー同士の軋轢が発生し、鍵を握る複数の担当マネージャの離反を招くことになったという。現在は組織体制を一新し、コンテンツ担当のRobert Kondrk氏と、Nine Inch NailsのTrent Reznor氏がApple Music事業全体を見る立場にあるという。このほか、デザイン担当としてJony Ive氏のチームが参画するほか、Beats MusicからやってきたJimmy Iovine氏とインターネット担当のEddy Cue氏が管轄する形になるようだ。
Apple側の目論見として、売上が停滞し、すでに縮小傾向が見えつつあるiPhone事業をカバーし、サービス事業を大きな柱の1つとするのがApple Music立ち上げの背景にある。ストリーミング型サービスの分野では欧州系のSpotifyが人気を集めているが、iTunes事業のコアだったダウンロード販売からストリーミングへとトレンドが変革しつつあるなか、これに対抗しつつApple Musicを盛り上げていかなければならない。
例えば、直近の2016年度第2四半期(1~3月期)決算でAppleのサービス事業の売上は前年同期比で20%増の59億9,100万ドルとなっているが、1年前の時点ではApple Musicはスタートしていないため、この増加分の多くがApple Musicによるものだと考えられる。また、2016年2月時点で1,100万だった契約者数が4月に1,300万と急増しているが、前年末にAndroid版アプリの提供や対応地域の拡大など、地道な拡大策が徐々に効果を上げている結果だと思われる。一方で、ライバルとなるSpotifyの3,000万オーバーの契約者数と比べると、提供地域がApple Musicのほうが多いにもかかわらず低いパフォーマンスに収まっており、より潜在的な成長余地があるとApple幹部や関係者らが考える要因にもなっている。