東北大学は、3次元的なディラック電子を有する質量ゼロの粒子「ワイル粒子」を物質内に内包したトポロジカル物質「ワイル半金属」を発見したと発表した。

同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の相馬清吾准教授、高橋隆教授、同理学研究科の佐藤宇史准教授、大阪大学産業科学研究所の小口多美夫教授、独ケルン大学の安藤陽一教授らによるもの。詳細は米国物理学会誌「Physical Review B」に掲載された。

ワイル粒子は、ディラック方程式において、質量ゼロのときに得られるフェルミ粒子として1929年にドイツの理論物理学者ヘルマン・ワイルによって提唱されたが、素粒子として実証された例はまだない。しかし、近年、ある種の半金属にて電子のスピン縮退を解くことで、物質内にワイル粒子が生成されるという予測がなされ、そのワイル粒子を物質内に内包した物質「ワイル半金属」が理論的に提案されるまでにいたっていた。

今回、研究グループは、NbPの高品質大型単結晶の育成に成功し、これが新型のワイル半金属であることを実験的に確認したという。

なお、物質内のワイル粒子はカイラリティの符号の異なる2つの粒子がペアで発現しており、それぞれが互いに衝突しない限り、絶対に質量を持つことがないという性質を有している。また、高い電気伝導性ならびに熱伝導性を有しており、そうした特性を活用することで、低消費電力の高速電子デバイスの開発につながるのではないかと研究グループでは説明している。

さらに、ワイル半金属では磁場がなくてもホール電圧が発生する異常ホール効果や、磁場と同じ方向に電流が生じるカイラル磁気異常といった現象が理論的に予測されており、今回の発見を契機に、そうした新たな研究が進むことも期待されるともしている。

ディラック粒子(左)とワイル粒子(右)における電子のエネルギー関係の模式図。エネルギー分散が直線的であるために電子の有効質量がゼロとなり、電子は高い移動度を示すようになる。ワイル粒子では、カイラリティの異なる2つの種類の粒子が同時に発生し、その2つが衝突しない限り、有効質量がゼロの状態が永久に保たれる

角度分解光電子分光によって得られたNbPのNb表面(上)とP表面のフェルミ弧電子状態の模式図。フェルミ弧は、表面電子状態のフェルミ面が開いた状態にあると、表面の運動量空間において弧形状をとるところから名づけられたもので、今回の研究では、Nb表面とP表面の2つの異なる表面の電子状態で異なる形状をしていることを確認したという