ストーリーはどう作るか

もうひとつ、ストーリーの作成について。こちらは様々な選択肢があるだけに、ある程度の型があるオチよりもさらに難しい面がある。これについては東京大学・鳥海不二夫准教授の「人狼知能プロジェクト」が面白い試みをしており、会話ゲームを複数のAIに解かせることで試合形式のログを作り、そのログの中から人間が面白いと思ったものを抜き出してストーリーにするという手法をとっている。

ドラマチックで面白いシナリオは人工知能(人狼知能)で生み出すことが可能

試合は逆転などドラマチックな展開になりやすく、何百試合に一度というような名試合と呼ばれるような面白い試合でも、AIなら何百、何千と生み出すことが可能だからだ。

展開そのものをAIにまかせるというのは大変ユニークな試みだが、この手法では一定の展開を持ったストーリーを作ることはできても、愛憎劇など、複雑な人間関係からなる小説を作るのは難しい。まだ研究を重ねていく必要がありそうだ。

「きちんと読める日本語」を実現するには

冒頭でAIが書いた文章を紹介したが、非常に整った日本語になっている。これはどのようにして書かれたのだろうか。

この文章は、コンピュータに小説としての体裁を整えた文章を書かせるための手法について研究している名古屋大学・佐藤理史教授の研究グループが開発したシステムを活用している。このシステムでは、人間が文章の構造を指定し、その構造を部品(=単語)から合成し、文字列を生成するという手法をとっている。

ここでいう「構造」とは、たとえば「導入部」を「冒頭」と「場面の描写」に分け、さらにそれぞれの描写を細かく分けて描写していく、という仕組みだ。各構造にはパラメーターを導入することで、表現の傾向や範囲の限定といった制御が可能になり、書き手の性別による文体の違いなども再現できる。最小限、人間が何も指定しなくても文章は作成できるが、構造をある程度指定したほうがより「意味の通じる」日本語になりやすい。言ってみれば人間がストーリーの土台を指定して、そこにコンピュータが破綻しない日本語を組み立てていくというスタイルだ。

文章構造を人間が指定してそこに単語をあてはめていく

同グループでは、こうして最終的に出力された作品から2本を「作家ですのよ」として2本の作品を星新一賞に応募している。