ソフトウェアの新情報はiPhone新製品の布石

いずれにせよ、WWDCにおけるMacBook Proはオマケに近い要素で、Apple的にもソフトウェア関連の発表に注目してほしいところだろう。AppleのOSプラットフォームが「OS X」「iOS」「tvOS」「watchOS」の4つに分散しているいま、カバーすべき内容は多岐にわたり、開発者としても今後の方針が気になるはず。このうち今回特に注目したいのは「OS X」「iOS」「watchOS」の3つだ。

まずwatchOSについては、今後のApple Watchの方針を示す大きな鍵となる。噂のApple Watch 2は全体にマイナーチェンジになるという話が出ているが、一方でアプリの拡充の面では停滞感が強く、よりいっそうのサードパーティの参画が求められている。機能的に大きなステップアップではないものの、このあたりの指針が改めて示されるタイミングであるはずだ。

次の注目がOS Xで、一部には「OS X」改め「MacOS」の名称でリブランディングが行われうともいわれており、現行のEl Capitan(v10.11)の“次”が説明されることになるだろう。「MacOS v10.12」がどのようなOSになるのかは不明な部分が多いが、前出のSwiftに絡んだ開発ツールの最新動向のほか、iOSから逆輸入される可能性のある機能(「Siri」など)、そして逆にiOSと差別化する部分など、今後のAppleのプラットフォーム戦略に関する部分が特にMacOSのパートで語られることになるのではないだろうか。特に同社が「iPad ProはPCの代替」と明言するなか、同社としての“PC”の位置付けに対する回答が求められる。

“PCの代替”とする「iPad Pro」

そしてiOSでは、9月に発表が見込まれるiPhone新製品のヒントが紹介されることになるだろう。筆者は特に「NFC]と「GPU」の2つの点に注目している。NFCについてはサードパーティへの開放に関する話題がたびたび出ており、これについては現時点で可能性も含めて未確認なものの、もし従来のNFCチップへのアクセスを禁止している方針変更を表明するのであれば、場所的にもタイミング的にもおそらくベストに近い。決済以外のアプリが登場する可能性も出てくるため、iPhoneの活用シーンを増やすうえで重要となる。

もう1つのGPUは、iOS 8の時代に発表された「Metalなどの技術のその後だ。現在のiPhoneはCPU処理性能的には一巡しつつあり、機能面でも大きなブレイクスルーは見込めない状態だ。一方で、次期iPhoneの上位モデルにはデュアルカメラ搭載が噂されていたりと、カメラ性能を活かすためのポストプロセス(後処理)工程にGPUを活用すべき場面が増えている。ゆえに今後のiOSデバイス向けSoCではGPU部分がより強化される傾向が強くなり、CPU部分よりも顕著になるとみている。

「Metal」

また、2017年以降は一部モデルに有機ELディスプレイ(OLED)が採用される可能性が指摘されているが、こうなるとディスプレイモジュールのコストが下がり、Appleとしては浮いた分のコストをiPhoneハードウェアのさらなる強化に投入してくると筆者は予想する。機能追加される部品として最も可能性が高いとみられるのが「カメラをはじめとした各種センサー」で、デュアルカメラや深度センサー、圧力センサーなど、iPhoneがよりセンサーの固まりとなっていくだろう。このとき、大量のデータを適切に高速処理してアプリの拡充に役立てるにはGPUの強化が必須で、これに向けた施策が行われるのではないかと考えている。

見どころは多いと思われる今年のWWDCだが、今後数年でAppleならびにハードウェアプラットフォームに起こる変化を先取りした内容が含まれている可能性が高く、このあたりに留意しつつ、当日のストリーミング放送やニュース情報に注目してみて欲しい。