4月2日、大阪・堺市にある堺ディスプレイプロダクト (SDP) にて、シャープと鴻海精密工業の共同会見が開かれ、その場で覚書が締結された。シャープの経営をめぐってはこの数カ月、大きな騒ぎが続いたが、ようやく再建に向けて本格的に動き出すことになる。

共同会見にて。左から、鴻海精密工業 載正呉 副総裁、鴻海精密工業 郭台銘 会長、シャープ 高橋興三 社長

「IGZO推し」だった鴻海・郭会長

鴻海がシャープの買収 (会見では、郭台銘会長がさかんに「これは買収ではなく出資だ」と強調したが、実質的には買収であることに変わりはない) に乗り出した理由については、シャープが持つディスプレイ技術と生産ラインの確保にある、と言われてきた。

実際、今回調達する資金の使い道についても、約2,000億円が有機EL (OLED) に関する技術開発・量産設備投資で、約600億円が中小型液晶を中心とした改善および次世代技術開発投資、とされている。発表会をSDPで開いたのも、ここの操業率低下がシャープ苦境の原因のひとつであり、鴻海との関係をめぐる中心にある、といっても過言ではないからだ。

会見の中で、郭会長は意外な言葉を口にした。「シャープはIGZOのリーディングカンパニーで、コスト競争力もある。私が技術者ならばIGZOを選ぶ」。 「私はIGZOを選んだ。IGZOが一番だ」と。

すなわち、OLEDへの投資は行うものの、シャープの強みはIGZOを使った液晶にある、と強調したのである。一方でもこうも語る。「シャープは財務的な問題から、積極的な改善投資を行えなかった」。シャープが今持っている技術力を生かし、積極策に出ることがシャープの価値を最大化する方法だ、と語ったのである。

シャープは、8K解像度の85型IGZO液晶パネルを製品化することにも成功している