前置きが長くなったが、早速6種のVRアクティビティと体験した感想を紹介していこう。

極限度胸試し 高所恐怖SHOW

「高所恐怖SHOW」のVR映像

地上200mの高所に飛び出した細い板の先に取り残された猫を救出するVRアクティビティ。実際のコーナーにも木の板が渡され、HMDを装着したまま、板の先に置かれた猫のぬいぐるみを取ってくることになる。体験時間は約7分。

一見なんてことはない、木の板が渡されているだけのVRアクティビティだが、体験時には命綱を結ぶなど臨場感たっぷり。部屋の奥には送風機が設置され、VR映像と連動して風が吹く仕掛けになっているほか、動きをトラッキングするマーカー付きの手袋、靴に履き替え、板の上での手足の動きが高精度でVR映像内に再現される。自分が細い板のどこに立っているかを認識できることが、このコンテンツの醍醐味。担当者も「足の位置が非常に重要なVRアクティビティ」と語る。

「高所恐怖SHOW」体験コーナーは黒いカーテンで仕切られており、中は板と送風機のみが置かれた殺風景な空間だ

はじめに、マーカー付きの手袋と靴に履き替える。これにより、実際の手足の位置とVR映像内の手足の位置が、ほぼ同じ感覚で再現される

全装備を装着。腰に巻いているのは命綱で、演出効果のほか、実際にバランスを崩すプレイヤーもいるためとのこと。通常の道では転ぶ前に足を一歩出して踏みとどまることができるが、このコンテンツではそのまま転んでしまう人がいるそうだ
【感想】映像にリアル感はないが、ヘッドホンから聞こえてくる風の音と、実際に送風機から送られる風の感覚で、頭では平坦な空間にいると理解していても、なかなか一歩が踏み出せない状態に。最終的には子猫(実際にぬいぐるみが置かれている)を助けられたものの、戻るときは両手で板にしがみつきながら後ずさることになった。わりと恥ずかしい

VR鉄道運転室 トレインマイスター

「トレインマイスター」のVR映像

JR山手線の運転手をVRで体験できるVRアクティビティ。JR東京駅~有楽町駅間を、実際にハンドルを動かして運転できる。体験時間は約9分。

E235系をモデルにした運転席や、東京駅~有楽町間のリアルな風景が、360度のVR映像で楽しめる。運転席内部には2本のシリンダ-を備え、自分で動かしたハンドルの加減速や、VR映像内のレールの継ぎ目と連動して椅子が動く仕組み。ちなみに椅子の表皮材は、輸送機の内装材を手掛ける住江織物のもの。背中越しに感じるシートの感触もリアルだ。

見どころは実際の地図データを元に再現された、ビルが立ち並ぶ東京~有楽町間の風景映像だろう。担当者によると、開発時に山手線の先頭車両で風景を確認したり、運転室内部の映像を作るため鉄道博物館に取材したりしたという。

「トレインマイスター」体験マシン。椅子のシートは実際に車両内装を手掛ける企業から取り寄せたという。実際の操作はテーブル左上にある加減速レバーのみ
【感想】実際のデータを元に再現された車窓風景と、運転席内部のVR映像が楽しいコンテンツ。自分の操作(加減速)に応じて椅子がガクンと動き臨場感がある。プレイ後に自分の運転をグラフで表示・再現するプレーバックも用意されいてる

ホラー実体験室 脱出病棟Ω(オメガ)

脱出病棟Ω(オメガ)

「気がついたら廃病院に閉じ込められていた!」という設定のホラー系VRアクティビティ。プレイヤーは車椅子に縛り付けられた(という設定の)状態から、迷路のような廃病院から脱出を図る。体験時間は約12分で、最大4人までの同時プレイが可能。

操作は椅子に備え付けのレバーと、手に持って自由に動かせるコントローラーで行う。コントローラーはライトとして用い、真っ暗な廃病院のVR映像内では、向けた方向が明るく映る仕組み。HMDはマイク付きで、他プレイヤーと実際に会話しながらプレイできる。

プレイヤーごとにルートが分かれており、プレイヤーAが道順を伝え、プレイヤーBが教えられたルートに沿って特定の操作をする、といった協力プレイも魅力。かなり過激な暴力シーン、グロテスクな映像が流れるので、苦手な方は要注意。試遊時、筆者は最終的にゲームオーバーになり、非常に衝撃的な結末を迎えた。

HMDとヘッドホンを装着し、左手で移動用レバー、右手にライト(コントローラー)を持ってプレイする。1ルームで2人体験でき、最大2ルーム4人までの同時プレイが可能
【感想】実際の「椅子に座る」状態と、VR映像内の「車椅子に縛り付けられている」という設定がリンクし、操作上の違和感が少ない。コンテンツ内でも走れないことが恐怖感を高めるほか、VR映像はわざと暗い状態にされており、照らした場所だけ見えるようになるライトも効果的だった。「ゾンビが追ってくる系」のコンテンツだが、内容は筆舌に尽くし難い怖さで、ほとんどの記者が絶叫する事態に

急滑降体感機 スキーロデオ

スキーロデオ

雪山の頂上から滑降し、最速タイムでゴールを目指すVRアクティビティ。スキー板上のマシンに載り、実際に体を動かして操作する。体験時間は約6分。

スキー板状の体験マシンがVR映像と連動し振動するほか、顔の前に備えた送風機で滑降時の風を体感できる。HMDはマイク付きで、息を吹きかけると、VR映像内で吐いた息が白く表示されるのが面白い。雪山のVR映像は若干単調だが、かなり高い場所からの滑降開始となり、非常にスピード感あるアクティビティだ。

足元のスキー板状のマシンに載り、左右に体重遷移することで方向をコントロール。VR映像内で木にぶつかったり、転倒した場合にはマシン自体が振動するほか、顔の前に設置された送風機で疾走感を得られる
【感想】ブレーキがないので、スピードに載ってくると左右に激しく動いて操作する必要があり、運動量が多いコンテンツ。かなり高所からのスタートとなるため、こちらも高い場所が苦手な方は注意したい

スポーツ走行体感マシン リアルドライブ

リアルドライブ

頭に装着するHMDではなく、ドーム(半球)型スクリーンを採用したVRアクティビティ。鈴鹿や筑波のサーキットコースに対し、ハンドルやアクセルペダルなどを使い、現実に近い形で操作できる。体験時間は約14分。

上部に設置された大型プロジェクタから、180度の半球スクリーンに映像を投映。椅子にはウーハーを内蔵し、コース外に乗り上げた時やコーナリング時の振動を再現する。マシンの形状としてはバンダイナムコエンターテインメントのアーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」(初期型)と似ている印象だが、視界いっぱいに広がる映像で没入感が高まる。

マシン内部には、アクセルペダルまでの位置を前後に調節できる椅子と、ハンドル、各ペダル類、VRアトラクション中止用のボタンが設置されている。上部には、ドームスクリーンに映像を映し出す大型プロジェクタが備えられ、内部は狭めの印象だ。マニュアル用のシフトレバーも用意されている
【感想】鈴鹿東コースや鈴鹿西コース、筑波サーキットといった有名コースが段階的に楽しめる(バナパスポートカードの記録と連動)。椅子下のウーハーが良く効いていて、コース外に乗り上げた感触がリアルだ

VRシネマティック アトラクション アーガイルシフト

「アーガイルシフト」のVR映像

巨大ロボットを操縦し、空中で敵ロボットと戦うシューティング系VRアクティビティ。体験時間は約7分。

担当者によると「『美少女と巨大ロボに乗る』という男性の夢を実現した」コンテンツ。敵への攻撃や搭乗しているロボットの動きに合わせ、前後とZロールで椅子が動く。

原案・監修は、バンダイナムコエンターテイメントのVRコンテンツ「サマーレッスン」を手がけた原田勝弘氏だ。しかし、女子高生の家庭教師を担当する「サマーレッスン」では、どうしてもユーザー自身がHMDを装着している感覚が邪魔になるという。

「アーガイルシフト」ではこれを踏まえ、VR映像内でもHMDに相当する装置を装着している設定とし、パートナーとなる少女が目の前で「見えますか?」と手を振るシーンからスタートするようになっている。また、実際に座る椅子や、椅子に備えられた操作用トリガーも、VR映像と同じとし、現実とVR映像との違いをできるだけ減らす工夫をしたとのこと。

世界観設定・シナリオは「攻殻機動隊」シリーズのProduction I.G、監督は「APPLESEED」の荒牧伸志氏、メカニックデザインは「機動戦士ガンダム00」の柳瀬敬之氏、キャラクターデザインは「鉄拳」の川野琢嗣氏と、豪華すぎるスタッフが参加。ファンならぜひ一度体験してみて欲しいコンテンツだ。

プレイ時、実際に座る椅子と両手のトリガー(操作レバー)は、VR映像内に出てくるコックピット・トリガーと同じ感覚で使えるように工夫されているという
【感想】ロボットに搭乗する時や出撃時に椅子が大きく揺れ、ワクワクする。視線を合わせることで手軽に敵に照準が合い、左右のトリガーを引くことで倒せ、特に難しさはなかった。360度作りこまれた映像も美しく、幅広い層の人が楽しめるVRアクティビティだと思われる

「VR ZONE Project i Can」施設概要

最後に、施設外用と利用情報を紹介していく。「VR ZONE Project i Can」の利用には「バナパスポートカード」と呼ばれる有料カード(300円)が必要となる。同カードはバンダイナムコのサービスを利用する共通IDと紐付き、ゲーム履歴の確認やアイテムの入手などが可能なユーザー認証カードだ。

6種類のVRアクティビティには、それぞれ体験料が設定されている。バナパスポートカードに独自の電子マネー「バナコイン」をチャージし、体験時に支払うことで、各アクティビティを利用できる。体験料は700円(651バナコイン・施設内チャージ時)からで、詳細は下表の通り。

スキーロデオ 700円(651バナコイン)
リアルドライブ 700円(651バナコイン)
高所恐怖SHOW 1,000円(930バナコイン)
脱出病棟Ω 800円(744バナコイン)
トレインマイスター 700円(651バナコイン)
アーガイルシフト 700円(651バナコイン)

全体的な感想として、VRアクティビティではかなり「リアル」に近い感覚が楽しめた(「高所恐怖SHOW」や「脱出病棟Ω」では冷や汗が出てしまうほど)。映像が細部まで丁寧に作られているほか、遊園地のアトラクションに見られるような、聴覚や触覚といった視覚以外の要素で高い臨場感が味わえる。一方で、乗り物酔いしやすい筆者は3コンテンツほど試したのち、強めの「VR酔い」に見舞われた。通常の遊園地アトラクションなどと同じく、自分の体調を踏まえながら楽しむのが良いのだろう。今後「VR ZONE Project i Can」では体験者の声を反映していくとのことだが、例えば「スキーロデオ」では周囲の温度を低くするなど、より感覚に訴え、リアル感を高める施策に期待したい。

利用者には、目元を覆えるマスクが配布されるとのこと