リーマン・ショックからこれまでの数年は、コストパフォーマンスの高いデイリーワインが注目を浴びてきた。これによりワインを飲む機会が増え、日本人のワインに対する味覚が発達したのは確か。となれば次は“よりおいしいワイン”を求める消費行動になるのは容易に予想できる。日本固有のワイン用ブドウ「甲州」や「マスカット・ベーリーA」を原材料にした“純国産ワイン”の人気が高まっていることも、日本人のワインに対する需要がシフトしている証拠だ。ただし国産ワインの場合、原材料となるブドウの確保が各社の課題となっており、高まる需要に即応できないというジレンマがある。その意味でもサッポロがピーター・レーマンブランドという“駒”を手中にできたことは大きい。
一方、カセラの代表取締役 ジョン・カセラ氏は「サッポロという日本における最良のパートナーを得られたのは幸運。豪州ワインの魅力をこれまで以上に日本のみなさまに伝えていただきたい」と、イエローテイルを日本ナンバーワンの豪州ワインに育てたサッポロの手腕に全幅の信頼を置いている。このサッポロとカセラの結束が、オーストラリア産ワインの存在感を高めるためのカギのひとつといえるだろう。
人口が減少フェーズに入った日本では、酒類の需要減衰が叫ばれている。そうしたなかにあって、ワインはまだまだ日本で伸びしろがあると予測されている。そのためか、ビール市場で激戦を繰り広げてきたメルシャンを擁するキリン、そしてサントリー、アサヒ、サッポロといった “ビール4強”のワイン市場に寄せる期待は大きい。奇しくも“レギュラービール”から“プレミアムビール”へと戦場が広がっていったように、ワインもデイリーからファインの領域へ広がる局面がみえはじめている。4強がどのようにしのぎを削っていくのか、興味が尽きない。