5日、Apple Store銀座にてトークイベント「Meet the Author」が開催された。登壇したのは、ともにミステリー作家として著名な似鳥鶏氏と青崎有吾氏。二人は、互いの代表作の楽しみ方、作家としての創作手法についてなどを大いに語り合った。

iBooks登場した新企画「小説家の推薦状

現在、iBooksに於いて、似鳥氏が登場している「小説家の推薦状」という特集ページが設置されている。これは、著名作家が登場し、彼らが注目する新人を紹介していくという新企画である。

似鳥氏はテレビドラマ化された作品『戦力外捜査官』などで知られるミステリー作家だ。そんな彼がプッシュするのが、同ジャンルで注目される気鋭の作家、青崎有吾氏である。青崎氏は、東京創元社が主催する公募の新人文学賞「鮎川哲也賞」を2012年のデビュー作『体育館の殺人』で受賞する。同賞史上初の平成生まれの作家ということで、若手ミステリー作家の中でも最も注目度が高い。似鳥氏は、『体育館の殺人』の主人公である「学校に住んでいる」名探偵・裏染天馬を、推理をしていたかと思ったら、徹夜でアニメDVDを見ていただけという変人かつダメ人間ぶりに爆笑したとコメントし、一方、ちょっとした不審点から鮮やかにロジックが紡がれる本格ミステリーとして、作品を高く評価している。

似鳥鶏氏

イベントでは、作品の登場人物に対する思い入れであるとか、ミステリーという題材で「人が死ぬ」ことに対する倫理観などを語りあったのち、執筆するのに場所はどこなのか、書くのはペンで原稿用紙なのか、アイディアをどうストックするのか、取材はどうやっているのか、といったことが明かされた。青崎氏は、作中の人物を構想するのに、道行く人をプロファイリングすることがあるそうだ。観察眼を磨くことで、登場人物の描写もより緻密になっていくということなのだろう。仕事場所については、プロットを考えるのは近所のカフェで、執筆は自宅という似鳥氏。「書く」という作業においては二人とも、カリカリカリと書き連ね、ああ、違う違う違う、と原稿用紙を丸めて捨てるというスタイルは、かなり昔の作家のイメージと笑いながら解説。今はやはりキーボードを叩いてPagesのようなワープロソフトを起動して、ということだ。アイディアをまとめるのにも、iPhoneやiPadを手にし、Webブラウジングしながら資料を探すということもしているという。この辺りも「現代性」を感じさせるという印象だ。

青崎有吾氏

インターネットで調査することにネガティブなイメージを抱く人もいるにはいるらしいが、それでも、例えばアルパカの鳴き声がどんなものか知りたいといったようなことは、圧倒的に簡単になったと指摘する。取材に関しては、特に「学園モノ」だと、個人情報の保護などから、直接学校に出向くのは難しくなっていると両氏。今どきの高校生の会話がどんなものなのか分からないので、描写が難しいとも。また、動物園などに取材に出かけると、非常口はどこですか? 監視カメラはどこですか? などと質問するたびに、不審者ではないかと訝しがられると、ジョークを飛ばす。執筆活動を続ける上で、学園モノに対しては、楽しかった学校に行けたらなという気持ちでいて、何歳になってもその気持ちは変わらないだろうと似鳥氏は述懐する。

両氏ともに自著のプロモーションで登壇してると明かした

トークの終盤、両氏は今回、実はプロモーションで登壇してると申告。青崎氏はiBooksでの『体育館の殺人』の期間限定無量配信、新刊の『ノッキングオン・ロックドア(徳間書店刊)』を、似鳥氏は「小説家の推薦状」でもピックアップされている期間限定無料配信のエッセイ『人間機能付き携帯型端末(東京創元社刊)』と4月28日発売の『家庭用事件(東京創元社刊)』をそれぞれ紹介した。

Apple Watchに通知が!

そして、イベントが始まって50分が経過したあたりで、二人の腕に通知が。この日は、両氏ともにApple Watchを着けての登場となっていたのだが、時間が来るととても気づきやすいバイブレーションで教えてくれると、左手を高く掲げた。

最後は、場内からの質問に応答。中には札幌から駆けつけたという熱烈なファンの姿も。最前列でトークに聞き入っていた女性からは普段どんなアップル製品をお使いですか? という質問が。似鳥氏は「ウチにiPadちゃんがいまして、アレのいいとこは可愛いところですよね」と返答。可愛さはエッジのないデザインにあるとのことで、主に家の中で利用し、愛玩しているそうだ。青崎氏は「家族が全員iPhoneを利用しているが、僕自身についてはノーコメント」とお茶を濁した。

サプライズゲストとして登場した相沢沙呼氏

これで終了かと思いきや、サプライズゲストという形で、両氏と同じくミステリー作家として活躍中の相沢沙呼氏が登壇。相沢氏も鮎川哲也賞受賞作家で、ミステリーとマジックを融合させたデビュー作『午前零時のサンドリヨン』を紹介した。相沢氏は大のアップルファンで、執筆にもiMacを使用しているとのことだ。壇上では、僕もApple Watch欲しいとアピールし哄笑を誘った。三人ともアップル製品は作品に登場させやすいという点では同意。リンゴのマークのパソコンという件があればすぐにイメージしてもらえるというコメントも飛び出し、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。