課題は回線負荷、画質の最適化は避けたい
LINE MUSICのようなストリーミング音楽も、スマホで使える気軽さが評価されている。その一方で、若い世代の有料契約には結びついていない、と言われている。ならば、こうした「使い放題」ビジネスは今後増えていくだろう。消費者をつなぎとめ、長期的に固定費を支払ってくれる状況にすることが、ビジネスにとっては重要だからだ。音楽はもちろん、Binge Onのように映像も見放題になれば、喜ぶユーザーはもっと多くなる。夢のような話だ。
もちろん、夢の裏には現実がある。Binge Onでは、ストリーミング映像が回線に合わせて「最適化」される。ようは画質が落ちるのだ。YouTubeなどではHD映像を視聴できるが、Binge Onでは480pに下がる。高画質で見たい人は、Binge Onをオフに設定する必要がある。
LINEなどのメッセージングは、さほどデータ量を食わないため、使い放題になってもネットワークにかける負担はたかが知れている。だが、音楽や映像はどうだろう? Binge Onがそうであるように、最適化を行わないと厳しい。あまり意識されなくなっているが、現在の携帯電話ネットワークでも、画像系は網内で圧縮をかけ、全体での負荷を減らす試みがなされている。せっかくの高画質写真も、いつのまにか圧縮されてディテールが落ちている可能性がある。
ネットワークの帯域はユーザー同士で共有しているものであり、無線通信を使う携帯電話では、その影響はさらに大きなものになる。LTEの技術進歩により、同じ電波帯での収容人数は増えたし、実効通信速度も上がった。だが、負荷も高まっており、混み合っていることには変わりない。若い世代では、家庭にそもそも固定回線がなかったり、あってもWi-Fiでのオフロードを行っていないところが少なくない。
その一方で、テレビなどの放送ではなく、YouTubeなどのネット系エンターテインメントを好むようにもなっているので、回線負荷はどんどん高まっている。テレビ局などでは、見逃し配信サービスを企画する際、「今よりももっと画質を下げられないか」との話が出たという。携帯電話網だけに依存するユーザーの加入ハードルを下げるためだ。
使い放題の一方で、それに応えるための回線拡充と「最適化」は必須だ。しかし、それがどのレベルまで行われるべきは、よく考える必要がある。