Intelは25日、貴社説明会を開き、同社のIT部門における業務改革に向けての取り組みとその成果を紹介した。これは毎年開催されているもので、今回は「生産性」「デジタル化」「サイバーセキュリティ」というキーワードを元に施策を解説した。

インテル 情報システム部 Japan and APAC Region 地域部長の邱天意氏。2015年の説明会では翻訳が間に合わなかった日本語のレポートを持っている

2016年のレポートタイトルは「FROM THE BACKROOM TO THE BOARDROOM~舞台裏から役員室へ~」となっている。これは、従来ならば裏方の作業であったIT部門が、いまでは大きなビジネス価値を提供するため、結果としてCIO(最高情報責任者:chief information officer)が役員室に呼ばれて報告や質問を受けることがあるということを意味している。

説明会の冒頭で、邱氏はIntelにおける過去2年間と現在の状況を棒グラフで紹介。Intel全体で10.5万人の従業員を擁するが、そのうちIT部門のスタッフは6,300名程で200名程増員したという。また、ストレージ容量は2年前の2倍、稼働中のサーバー台数も2倍以上に増やしつつ、従業員一人あたりのIT支出額は微減の1.3万ドルだという。

レポートハイライト。ストレージ容量とサーバー数を増やしつつ、IT予算はほぼ横ばいとなっている。タブレット台数が少ないのは「ノートPCのタッチ対応率が高いから」

今回説明の3項目のハイライト。モバイルアプリは2015年から倍増を目指してたはずだがそこまでは増えていない

今回のレポートでは、IT投資の結果を「生産性」、「デジタル化」と「サイバーセキュリティ」に分けて説明する。

ワイヤレス会議室の導入やクラウドによる開発環境の提供で生産性を向上

「生産性」に関しては、オフィス内で効果的な会議を行うために革新的なワイヤレス会議室を500室以上設置したという。日本では、まだトライアルで数室しか設置されていないそうだが、台湾では全会議室に導入したとのことで、具体的には会議室に小型PCを設置してIntel Uniteで接続が可能になっている。

Intel Uniteでは、6ケタの数字を入力することでリモートでも接続可能なことから、利用者からも高い評価を得ており、ソフトウェアの導入もvPro PCを使うことで追加コストなしで行える点がメリットだ。

ワイヤレス会議室はIntelが提唱する「進化する仕事術」の実践だろう。プロジェクターにPCを接続する手間を省き、関連資料もそれぞれのPCに共有できる効果は大きそうだ

このほか、オフィスにおける別の例として、ケーブル類のIT周辺機器を自販機(代金は部署に請求する)を活用したり、会議室にセンサーを入れる事で「予約されているのに使われていない会議室を使いたい人に開放」するシステムを紹介した。

IoTの利用は工場からオフィスへと広がった。また移動式会議ロボットでちょっと離れた会議にも参加できる

一方、開発現場での改革として、クラウドによる開発環境の提供を始めている。従来は製品開発チームごとにローカルの検証環境をホストしていたが、これをオンデマンドで利用できるクラウド共有リソースとして提供する。12万台のサーバー資源をプールして利用することによって、検証環境を数分で構築できるようになったという。さらに今後は外部パートナーと共同で利用できる環境を作るとしている。

邱氏が実例として挙げた例として、ワイヤレス製品のバグを特定するためのテストプロセスについて、これまで手作業で60分程かかっていたものが、自動化することによって5分程度への短縮を実現した。これによって、技術者が費やす時間を減らし12.8万ドル相当の節約が可能となり、洗い出した問題点のうち重要度の高い課題を優先的に解決できたという。

データの活用でコストを大きく削減

「デジタル化」に関しては8億ドル以上のビジネス価値を生み出したとし、IT予算の7割のリターンがこの部分だけで得られたという。(従来のデータウェアハウスが扱っている構造化データに加えて)非構造データも解析するインテリジェントアナリティックスハブを構築し、インサイトの待ち時間を短縮し、四半期だけで17万ドルの費用削減に役立ったとその効果をアピールする。

ビックデータ活用の予測分析ソリューションによってモデル化までの時間は半減、データ処理の待ち時間も短くなりマーケティング費用削減へとつながったという

製造データに関しては、50億ものデータポイントから生まれる膨大なデータを分析するが、モバイルアプリによってニーズに合ったフィルタリングを行い、必要なデータをクリックして短時間にレポートを得ることができるようになった。また、インメモリー技術を使うことによって在庫を最適化。データウェアハウスのクエリ処理時間を6割削減し、TOP10のトランザクション処理を2倍にすることができたという。

環境構築の俊敏性とコスト効率を上げるためにSDI(Software Defined infrastructure)も利用し、セルフサービスプロビジョニング時間が短縮した。一方SDxを構築する要素のうちSDS(Software Defined Storage)はまだ成熟度が足らないことを課題として挙げた。

Xeonサーバーを多数設置しつつ、高い電力効率を実現。ちなみに昨年達成したPUEは1.07だったのでさらに効率を上げたデータセンター設計を行ったことがわかる

ウェハ工場を二つデータセンターに転換。片方は自然換気空冷、もう片方は密結合蒸発冷却を行うことで高いラックあたり電力密度と電力効率を実現した

ターゲットを絞った攻撃にリソースを集中

最後の「サイバーセキュリティ」に関してはターゲットを絞ったAPT攻撃に関しては高度なセキュリティ防御が必要であり、ここに対処リソースを集中。一方99%を占める従来型脅威に関しては信頼できるセキュリティアーキテクチャで防御する。また、単に保護するだけではなく、侵入された場合を考えた検知や修正もバランスよく考える事が重要だという。

99%を占める従来型の脅威は信頼できるセキュリティ・アーキテクチャで自動防御し、多くのリソースを進化するAPT脅威に割り振る。また、保護だけに集中するのではなく侵入されたのちの検出と復旧という修正作業のバランスが重要

セキュリティ上、最も脆弱になりがちな人間に関しては、サイバーセキュリティの知識と対策を企業文化に組み込み、連携によってガバナンスを実現することが重要だという考えを示した。

最大の弱点ともいえる人間を継続的な教育と意識向上を企業文化として取り入れることでガバナンス確保に努める

SaaSの利用も企業としては不可欠ゆえに、SaaSをセキュアに運用するアーキテクチャを考案