現在筆者は、アメリカ・サンフランシスコにいる。3月14日から18日まで開催されていた「Game Developers Conference (GDC)」を取材したためである。下記の「PlayStation VR (PS VR)」に関する発表も、GDCに合わせて行われたものだ。

PS VRを発表する、ソニー・コンピュータエンタテインメントのアンドリュー・ハウス社長

コマ落ちも遅延も「酔い防止」のため御法度

今年のGDCは、発表・講演・会場展示ともに「VRが中心」だったといって過言ではない。現在のVRブームに火をつけた「Oculus Rift」の個人向け出荷が3月末から開始されること、来たるPS VRの発売など、VRが家庭に浸透するチャンスとして、2016年がきわめて大きな意味を持っていることと無縁ではない。

だが、こと「開発者会議」であるGDCという場にとっては、VRに関する知見を交換し合うことが重要である。VRには課題がたくさんある。それらをきちんとクリアーしないと良い体験にはならない。それどころか、「VR酔い」を起こし、反感を醸成することになってしまう。

まずご法度なのが「コマ落ち」。ゲームをしていると、表示キャラクターが増えたり、込み入ったシーンになった時、表示コマ数が一時的に落ちることが少なくない。一般的なゲームは、毎秒30コマもしくは60コマをターゲットに制作されているが、一時的なコマ落ちはよくあることだ。

だが、VRでは許されない。現実世界にはコマ落ちなどない。VRによって視界を映像に置き換えた場合、コマ落ちした瞬間に、脳が実際の動きと映像の間の違和感を感じて「酔い」の原因になる。視界を置き換えるVRでは、頭の動きに合わせて映像を書き換える必要があるから、画面内の映像の書き換え範囲は、一般的なゲームより広くなる。さらに、書き換えコマ数も多い方が良い。毎秒30コマではVR酔いを防げないのだ。

OculusやHTC Viveの場合、書き換えコマ数は毎秒90コマ。このコマ数が維持されるのが望ましいが、首の動きにに合わせて映像の位置を補正する技術 (リプロジェクション) を使って、一時的なコマ落ちをカバーする仕組みも盛り込まれている。仮に画像の端が若干欠けたとしても、その瞬間の首の位置に合わせて映像が描画されている方が、酔いを防止できるからだ。90コマをどうしても維持できない場合、45コマにしてリプロジェクションによる補正をかけた方がいい、ということになっている。

PS VRの場合には最低60コマだが、リプロジェクションを組み合わせた仕組みでコマ数を自動的に120コマまで増やすようになっている。また、90コマもしくは120コマでの直接描画も可能だ。どちらにしても、推奨コマ数を下回るコマ落ちは「もはや許されないもの」だ。

快適なVR体験にコマ落ちは許されない