これに続き、JapanTaxiの山本智也氏(Photo15)より、JapanTaxi側の開発意図が説明された。同社の親会社はタクシー会社の日本交通(株)であるが、この日本交通の子会社として情報部門に携わっているのがJapanTaxiである。同社が開発した有名なアプリが「全国タクシー」である(Photo17)。

Photo15:JapanTaxi(株)プロダクトマネージャーの山本智也氏。実はPhoto11にも出ている。なんでも入社後は暫くタクシー運転手も(ユーザーニーズを知るという意味で)されていたそうだ。

Photo16:日本交通といえば社長の川鍋一朗氏が有名であるが、現在川鍋氏は日本交通の会長として業界活動を行うほかJapanTaxiの社長を務めており、日本交通そのものは知識賢治氏が社長を勤めているそうだ。

業 Photo17:2011年の発表時には全国のタクシーの4%をカバーだったが、その後着々と増えて現在は10%に達している。最近だとYahoo!地図との連携にリンクを貼ってみます。も発表された。

さてこのJapanTaxiは単にアプリを作るだけでなく、タクシーの車載システムの開発も行っている。というか、こうしたものを自社で作ろう、というのがどうもJapanTaxiの設立の動機だったようだ(Photo18)。ご覧の通り様々な周辺機器やシステムが、これまでは個別に設置されて動作していたらしいのだが、これを統合しよう、ということでAIOS(All-In-One System)の開発を手がけたのだとする。先の記事にもある通り、全国タクシーそのものはWindows Azure上で動作しているので、タクシー側はクライアントとして様々なデータをAzureに送り出すと共に、Azureからのデータ(配車指示など)を表示する機能が必要になる(Photo19)わけだが、これを実行するのがAMOS-825という形だ。

Photo18:最初に手がけたのがドライブレコーダーだったそうだ。

Photo19:実際には車両側で集められる運行データを集約するだけで、例えばハザードマップの様なものも作れるわけで、そうしたものを自治体に提供するとか、あるいはある程度集積したものを第三者に売るといったビジネスも可能であり、そうしたことまで考えているとの事だった。

ではそもそも何でAIOSを作ろうと思ったかというと、以前のタクシーの中身はこんな具合(Photo20)になっており、そもそも操作の統一性が無いとか、見た目にも汚いとか、色々問題が多かったとの事。またそれぞれの機器は別々のメーカーがそれぞれ設置してゆくだけで、コスト面でも高くついており、それであれば自分達で作れば、最悪金額が同じでもノウハウが貯まるのでやろう、という決断だったそうだ。実際には全部のシステムをまとめて、という訳でなく順次機能を追加する形になっており、タクシーメーターの統合までが現在完了、次は音声認識だそうである(Photo21)。

Photo20:こうした機器の総額は、車両一台あたり80万近かったそうで。AIOSにすることで、ハードウェア代だけで考えると1/3~1/4に減ったそうだ。

Photo21:ちなみにこのAMOS-825を選択するに至ったきっかけは、2014年4月のIP配車システムだった模様。

Photo22:JapanTaxi(株)プロダクトマネージャーの青木亮祐氏

続いて同じくJapan Taxiの青木亮祐氏(Photo22)より、もう少し突っ込んだお話が聞けた。そもそも同社は全国タクシーと連動する形で、IP配車システムをAndroidをベースに開発した。操作性を考えるとAndroid Tabletになるのはまぁ当然で、当初はAIOSをTabletをベースに構築するつもりだったそうだ。ところが夏場になると、Tabletが熱暴走してしまうという問題がでたそうだ。そもそもコンソールパネルそばだからただでさえ夏場は暑い上、アプリケーションをフルに動かすからCPUの発熱も凄い。結果、夏場になると勝手に落ちる(Thermal Shutdownを発生する)とかいうことになり、これを何とかしないとまずいという話になった。そこで青木氏は色々なメーカーのTabletをあたったものの、やはり構造的にTabletでは無理があるという話になった。VIA TechnologiesもViega Tabletという産業向けTabletを提供しているが、これでも無理だったそうだ。ついでに言えば、AIOSを全部載せるには、性能的にも既存のTabletだとちょっと性能不足な面があったらしいが、性能を上げると更に発熱が増えるので、これ以上上げられないという問題もあった。

Photo23:ちなみにクラウドとの接続はLTEであるが、これはタクシー内にLTE対応のルータがあり、これとWi-Fiで接続する形となる。元々はTabletでの接続を前提にしていたからで、将来的にはAMOS-825内にLTEモジュールを入れることも検討しているとか。ちなみに折角GbEポートがあるのにWi-Fi接続な理由は、配線の問題だそうである。

Photo24:デモ機のLCDはArduioにLCD Shieldを載せた形で実現されていた。

ところがVIA TechnologiesはViegaの代わりにセパレート方式での提案をJapanTaxiに行い(唯一VIA Technologiesだけがセパレート式の提案をしてきたそうだ)、これを検討したところ良さそうだという結論が出て、そこから僅か半年でシステムが完成したのだという。当初はAMOS-820ベースでの提案だったが、これでは処理性能が足りないということでDual CoreからQuad Coreに切り替えたことで処理性能も要求を満たしたし、液晶部はプロセッサなどを搭載しないので最大70℃までの温度範囲をカバーできる様になった事で、夏場の問題の解決の目処も立った。

また、細かいところでも同社のサポートには非常に満足だったという。当初使っていたTabletはAndroidそのままなので、ステータスバーをスクロールダウンしてカスタマイズしたり、ナビゲーションバーでタスクを切り替えたりホームに戻したり、なんて事が可能であり、実際そうした事をしたあげくIP配車アプリを消したり、自分のアプリケーションを登録したりなんて使われ方をした場合もあったそうだ。そこでステータスバーには輝度調整しか乗せない(しかも調整範囲も絞り込む)とか、ナビゲーションバーを無効にするなどの対応をVIA Technologiesの方で行ってくれたとの事。あるいはフォントを(デフォルトの中華フォントから)JapanTaxiが指定した独自フォントに差し替える作業も1日で済んだそうで、こうしたカスタマイズのきめ細やかさや反応の速さに非常に感謝しているとの事だった。