「サボる」ということは?

スタンフォード大学 医学部睡眠・生体リズム研究所 客員講師/精神科医・医学博士 西多昌規先生

「正しいサボり方研修」では講師として、スタンフォード大学 医学部睡眠・生体リズム研究所 客員講師を務める精神科医・医学博士の西多昌規先生が招かれた。

まず「サボる」という行為についてだが、ウィキペディアで「サボる」を検索すると、「サボるとは、仕事などを怠けること。 過失に見せかけ機械を破壊する、仕事を停滞させるなどして経営者に対し損害を与えることで事態の解決を促進しようとする労働争議の一種であるフランス語のサボタージュ(sabotage)を動詞とした造語」と書かれている。これに対し西多先生は、「フランス語のサボタージュのレベルでは日本では使われていない。日本での意味にすると、『過重労働のわりに効率がさっぱり上がらない日本の労働環境をサバイバルするため、有志が独自に編み出した生存戦略』といったところだろう」と皮肉めいた。

エクスペディアジャパンが毎年実施している「有給休暇・国際比較調査」によると、日本の有給取得率は、26カ国中、韓国に次いで低い状況となっている(2015年結果)。しかし、「休み不足を感じている人の割合」は39%と低く、さらに「自分の有給支給日数を知らない人の割合」は53%と、他国に比べて圧倒的に高い割合となっている。ちなみに、韓国では23%、アメリカでは16%という結果だ。

これが進んで仕事をしているような状況であればよいものの、「仕事に満足していている人の割合」は17%と低い。にもかかわらず、「休暇中も仕事が頭から離れない人の割合」は13%と、こちらも他国と比べて高い結果となった。

このような状況の中、「若い人の死因の1位は自殺。20代や30代は、メンタルに気をつけなければいけない」と、西多先生は注意を促した。また「生産的に"サボる"。こういう考え方があってはいいのではないだろうか」と語った。

「休む」ということは?

日本では「休むこと=悪」とされる風潮があるが、西多先生は「休む方が仕事がはかどる科学的な根拠がある」という。

ぼーっとしている時と仕事をしている時を比べると、仕事をしている時の方が頭を使っているように思われがちだが、実は逆なんだそうだ。ある研究結果によると、ぼーっとしている時の脳のエネルギー消費は通常思考時の約15倍もあるという。

ぼーっとしているときに活動している脳

つまり、ぼーっとする時間をつくらずに働き続けていると、脳が活性化する時間がないため、大事な活動ができなくなってくるというわけだ。

しかし、全く何もしないというのも、実はよくないのだという。あるクリエーティビティ能力を測る実験によると、「休憩しながらどうでもいい作業をしている」時が、最もアイデアが生まれる結果となったという。

「休憩中にどうでもいい作業」「休憩中にキツい作業」「ただの休憩」「休憩なし」の4条件下での、クリエーティビティ向上率

「現代人だとスマホ遊びなどをしながら休憩するのがちょうどよいだろう」と西多先生は言う。