大手携帯キャリア3社の第3四半期の業績は好調だったが、先々の見通しに触れると楽観しづらい状況にある。昨秋から議論が行われてきたいわゆる"スマホ料金是正の問題"が影響を及ぼしかねないからだ。各キャリアの代表は先行きをどう見ているのか。

今回の問題はもともと、スマホの月額負担が家計の支出に占める割合が高いとして、それを是正するよう、総務省で議論を進めてきたことに端を発する。これにより、料金プランの多様化による負担の軽減、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)利用者などへの行き過ぎた端末購入補助に歯止めをかける措置が大手携帯キャリアに求められた。こうした流れを受けて、実質ゼロ円以下の端末販売は1月末をもって鳴りを潜めた。

これによる影響について、携帯キャリア各社の代表はどう見ているのか。NTTドコモの加藤薫代表は、収支への影響について「プラスもあるだろうし、マイナスもある。経営としてはマイナスサイドに備える必要がある。足りない部分はコスト効率化で吸収しながら、リスクを最小化していきたい」と話す。

NTTドコモの加藤薫代表

もっともリアルな発言を行ったのは、KDDIの田中孝司代表だ。「1月末に溢れんばかりのお客さんにご来店いただいた。その反動で2月は2割は確実に落ちているかもしれない。店舗によってはもっと落ち込んでいると思う」と冴えない表情で語った。また、業界全体の問題として「一番怖いのは興味の行き先が別のところにいってしまうこと」を指摘している。

終始表情が冴えなかったKDDIの田中孝司代表

ソフトバンクグループの孫正義代表はそれほど影響ないと見ているようだ。同氏は「0円で提供するのは経営的に大きな負担だった。経営的には悪くはない」「結果的に総務省のみなさんが指摘した方向でいい方向に向かっているのではないか」などと話す。その一方で「ユーザー目線から見たときに果たしていいのか、というのはある」とも指摘している。

ソフトバンクグループの孫正義代表

一連の発言を見ると、実質ゼロ円以下の端末販売については、各社各様の捉え方だ。KDDIを除き、警戒はしつつも、目先については、それほど影響はないのかもしれない。

しかし、KDDIの田中社長が指摘するように、興味の行き先が他に向かうのはキャリアとしては困るところだ。その興味のひとつが端末であったとして、買い替えが鈍れば、携帯キャリアの今後の収支や戦略に影を落とす恐れはある。端末目当ての来店客数が減れば、固定通信とのセット割、電気料金とのセット割、キャリアショップを通じた物販などに影を落とすのは避けられない。携帯キャリアのサービスは従来とは違い多様化しているのが現状であり、顧客との接点をなす販売店の役割は大きくなっている。

特にauスマートバリューを武器にしつつ、最近では「au WALLET Market」といったリアル店舗での物販サービスに力を入れてきたKDDIにとって、販売店の来客数の減少は、とりわけ無視できない要因だ。ソフトバンクも固定通信のセット割、電気料金のセット割を用意しており、NTTドコモでは、生命保険の販売も予定している。実質ゼロ円以下の端末販売の廃止は、こうしたサービスを店頭で勧める機会を奪いかねない。今月以降の販売店への客足がどうなるのか。注目しておきたいところだ。

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