手持ちのスマートフォンがなくなっていたことに気付き慌てふためく――こんな経験をしたことは、モバイル機器使用歴がそれなりに長いユーザーなら一度や二度はあるはずだ。置き忘れ、落とし物、あるいは盗難、いろいろ原因は考えられるが、まずは端末がどこにあるかを探そうとするだろう。もしiPhoneならば「Find My iPhone」という強い味方が……と思いきや、これが原因で自宅への意図せぬ来訪者の度重なる訪問に悩まされている人もいるようだ。

いま、この「私の携帯を探す」機能で悩まされている米ジョージア州アトランタ近郊在住の2人が話題になっている。同件はFusionが報じており、それによればChristina LeeとMichael Sabaという2人の人物は問題となる家での共同生活を2015年2月にスタートさせたが、すでに最初の月に怒りをたたえた家族が訪問してきて「盗んだ携帯電話を返せ」と要求してきたという。今度は2カ月後に別の友人グループが訪問してきて、やはり同じ要求をしてきたようだ。こうした状況はエスカレートし、あるときには1月だけで4回もの訪問者があり、朝、夕、深夜までお構いなくドアをノックしてきたようだ。2016年に入って、すでに半月で2回の訪問があったという。

さらに酷いのは携帯だけでなく、「携帯の持ち主」までもが行方不明になっているケースで、昨年6月には10代の少女が行方不明になったとその両親から通報があり、居場所として示された問題の家に警官がやってきて、2人を容疑者として家の外で拘束しつつ、家の中の捜査が終わるまで1時間以上にわたって締め出して、トイレに行くことも許さなかったようだ。結局、犯行現場としての疑いが解けたものの、こうしたトラブルが今後も起きないとは限らず、より最悪な「直接暴力に訴えて出る」ケースを警戒する毎日という。似たようなケースは以前にも英国などで報告されており、今回の家に限った話題ではないようだが、無関係の人間にとっては非常に迷惑な話だ。

ふだんスマートフォンの地図アプリを使っているユーザーならよく知っていると思うが、スマートフォンにおける位置情報はGPSなどの衛星技術のみならず、携帯ネットワークやWi-Fiの電波を使って測定している。ビルの谷間や屋内、地下などではGPSの信号を受信しづらく(もしくはできず)、位置決めのための補助情報としてこれら電波を活用している。またGPSによる位置計測は収束に時間がかかるため、素早く位置を特定するためにもこれら電波は活用されている。この「どの電波を受信したらどの位置にいるのか」といった情報はバックエンドでデータベース化されており、これを適時参照しておおまかな位置を決定している。

データベースの作成には、普段われわれが携帯電話を持って移動する際に自動収集されるMACアドレスなどのデータが活用されるが、たまに「無線LANルータ」や「モバイル機器」など常に移動する基地局がデータとして収集されてしまうことがあり、これが位置情報特定におけるミスを誘発することがある。たまに人の多い場所に行くと、位置情報としてまったく見当違いの場所が指し示される現象が見られるが、その理由の1つはこうした間違って収集されたデータに起因する。特に「Find My iPhone」が利用されるケースにおいて、GPS信号が満足に取得できない屋内のような場所では、何らかの原因で今回のような「特定ポイント」が指し示されやすい可能性がある。

問題は、データベース化された位置情報の対応表でエラーを特定することが難しく、解決に時間がかかりそうな点だ。また、今回のケースではiPhoneとAndroid携帯の両方のケースで問題が発生しているとのことで、必ずしも片方のサービスの情報収集手法に問題があるわけでもなさそうな点も気になる。いずれにせよ、問題がうまく早急に解決してほしいところだ。