アップルは9日、App Store(アプリ)、iTunes Store(映画、音楽、Podcast)、iBooks(ブック、マンガ)の「Best of 2015 今年のベスト」を公開した。今年のトップセラーや人気作品、コンテンツなどが掲載されている。
App Store
App Storeのベストアプリに選ばれたのは「Enlight」(iPhone部門)、「Fantastical 2 for iPad」(iPad部門)。ベストゲームは「Lara Croft GO」(iPhone部門)、「Vainglory」(iPad部門)だった。
「Enlight」は、写真の編集や加工に必要なあらゆる機能を搭載する画像編集アプリ。1枚の画像を編集するためにいくつものアプリを起動させていた人は、このアプリを使ってみると便利さに驚くのでは。「Fantastical 2 for iPad」は、音声入力に対応したスケジュールアプリ。iPhoneに親和性の高いデザインや直感的なUIも魅力。「Lara Croft GO」は、ターン制パズルアドベンチャーゲームアプリ。太古の遺跡を舞台とする神秘的な世界観に思わず惹きこまれてしまう。「Vainglory」は、オンラインバトルゲームアプリ。タッチに最適化された操作性や高い戦略性から世界大会も開催されるほどの人気アプリとなった。
iPhone/iPadだけでなく、今年からはApple Watch部門、Apple TV部門も新設された。Apple Watch部門では、「Clipstro キセキ(軌跡)のビデオカメラ」、Apple TV部門では「クロッシーロード」が選ばれた。
「Clipstro キセキ(軌跡)のビデオカメラ」は、体操やフィギュアスケートのテレビ解説でおなじみの残像動画を生成するアプリ。Apple Watchでは、録画、設定、変換、保存といったほぼすべての操作が行える。「クロッシーロード」は、カワイイ世界観とは裏腹にその高い中毒性が魅力のゲームアプリ。Apple TVでは複数プレイヤーによるマルチプレイも楽しめる。
iTunes Store(映画)
iTunes Storeの映画部門では、ベスト大ヒット映画として「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、ベスト監督作品として「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」、ベスト日本映画として「ビリギャル」、ベストファミリー映画として「インサイド・ヘッド」が選出された。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、圧巻のビジュアルと世界観、アドレナリンほとばしる爆裂スタント、魅力的なキャラクターたちが観る者に衝撃を与えた、革命的アクション作品。ド派手なアクションでストレスを解消したい人はぜひ一度観てほしい。「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、今年映画賞を総なめにしたショービス界を舞台に現実と幻想が交差する異色ドラマ。縦横無尽なカメラと極めて映画的な手法を駆使したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の独創性が光る。
「ビリギャル」は、実話を元にした王道サクセス・ストーリー。今年最も日本を泣かせた1本とも言える作品で、がむしゃらに夢へと突き進む有村架純のまっすぐ姿が爽やかな感動を呼んだ。「インサイド・ヘッド」は、多感な少女の頭の中で、彼女を救うため5つの"感情"たちが繰り広げる冒険を描く、カラフルかつファンタジックムービー。誰もが共感せずにはいられない、ピクサー史上最も意欲的な作品だ。
iTunes Store(音楽)
iTunes Storeの音楽部門では、ベストアーティストとして「POSITIVE」(tofubeats)、ベストアルバムとして「PLANET SEVEN」(三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、ベストソングとして「Drag Me Down」(One Direction)、ベストニューアーティストとして「THE BAY」(Suchmos)が選出された。
「POSITIVE」(tofubeats)は、約1年ぶりとなるtofubeatsの最新アルバム。tofubeatsは、この1年間、リミックスや他アーティストの作品に参加するなど、スピード感とクオリティを伴った多作ぶりが際立ち、ベストアーティストに選ばれた。本作では、多彩なゲストとのコラボレーションが揃っており、プロデューサー的側面も打ち出している。J-Popとクラブミュージックの次世代バランス感覚を追求しているtofubeatsらしい作品に仕上がった。
「PLANET SEVEN」(三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)は、J-Popシーンを語る上で欠かす事の出来ないグループ、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE のオリジナルアルバム。オープニングを飾る「Eeny, meeny, miny, moe!」を始め数々のヒット曲を交えた本作は多くの人々に支持された。またボーカルの今市隆二と登坂広臣の歌唱力、表現力と共に、緻密に作られたバックトラックにも注目したい。
iBook
iBookでは、ベスト小説として「火星に住むつもりかい?」(伊坂幸太郎)、ベストマンガとして「雪花の虎」(東村アキコ)、ベストミステリーとして「流」(東山彰良)、ベストビジネスとして「新・100年予測 ヨーロッパ炎上」(ジョージ・フリードマン、夏目大)が選出された。
「火星に住むつもりかい?」(伊坂幸太郎)は、平和を守るために公権力が暴走する社会を舞台に、正義とは何かを問う一作。伊坂幸太郎ならではの、張り巡らされた数々の伏線がやがてひとつに繋がるストーリー展開の見事さに圧倒される。
「雪花の虎」(東村アキコ)は、「海月姫」「東京タラレバ娘」など現代女性のリアルな姿を描いた作品で人気の東村アキコ氏による作品。本作では、上杉謙信が実は女性だったという俗説をもとに、初めて挑む大河ドラマテイストな歴史マンガだ。ギャグ、エッセイなど多彩なジャンルで活躍する東村アキコ氏が短気で利かん坊な主人公の成長をどのように描いていくのか楽しみにさせる。
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Bestに輝いたタイトルを振り返ると、アプリ部門はカメラ機能にフォーカスしたものや、新しいタイプのSNSアプリ、インタラクティブな教育コンテンツが選ばれ、iPadでの音楽制作を支援するツールもピックアップされた。iPhoneで言うと、3D Touchという機能が、iPadではiPad Pro用にApple Pencilという新しいデバイスが登場した年でもあるが、今後は、そういった新機能/新デバイスの特徴を活かしたアプリがフィーチュアされるに違いない。ゲーム部門は国内の大手デベロッパーによるハイクオリティなタイトルが貫禄という感じで選出されている一方で、「Brain Dots」や「Downwell」のようなインディペンデントなデベロッパーによるタイトルの健闘が目立つ。一発ネタで大当たりするという時代は確かに終わったかもしれないが、アイディア次第で大化けする可能性は開発に参加する全員に与えられていると言えよう。映画はトップ20の半分以上がアクション映画となったが、ファミリー向け作品もランクイン。また、『インターステラー』や『ゴーン・ガール』など、興行収入ではランク外になっている作品がトップ10入りしているのも「ならでは」の結果である。iBooksでは、映画化されたコミックが人気であり、戦後70年という背景があってか、戦争と平和をテーマにした小説が注目を集めた。Apple TV向け、Apple Watch向けのアプリはまだ数が少ないという印象があるが、異なる視点からだと、この分野にはビジネスチャンスがいくらでもあるとも見える。リリースも爆発的に増えていくことだろう。そして最後にMusic。今年はApple Musicのサービスが始まった年でもあるが、そのApple Musicがベストアーティストに選出したのは、tofubeats。その他にベストアルバム、ベストソングなどが発表された。秋には第一回目となるApple Music Festivalも開催され、盛況のうちに幕を閉じた。日本においては、続々と新しい定額音楽配信サービスが始まった年でもあるが、iTunesにとっては10周年というアニバーサリーイヤーだったことも忘れてはならない。来年どのようなアプリやコンテンツが登場するのかはわからないが、今年を上回る素敵で魅力的な作品に期待したい。