DragonBoardでハイレゾ再生

さて、肝心の「DragonBoardでなにをやるか」だが、筆者はオーディオ再生をチョイスした。具体的には、96kHz/24bitなど音楽CDの情報量を上回る"ハイレゾ音源"を再生できるかと、その段階に至るまでにどのような作業が必要かを探ってみることにした。

最初に着手したのは、音楽再生機能のチェック。apt-chacheコマンドを使い「audio」や「sound」などのキーワードで検索したところ、軽量フレーバーのLubuntuゆえか、多様なサウンドフォーマットに対応したオーディオプレーヤーが収録されていないようだ。GUIのメディアプレーヤーも最初から組み込まれていない。

そこで検討したのが「MPD」。Raspberry Pi向けの音楽再生に特化したディストリビューション、例えばVolumioに収録されている再生機構だ。MPDが定めるプロトコルに対応したCUIツールやWebクライアントなどから、再生指示を出すことができる。なお、Webクライアントについては、別途Webサーバの設定が必要なため、今回は作業を見送った。

MPDを導入したときの手順は以下のとおり。幸い、デフォルトのリポジトリに必要なパッケージ一式が公開されていたため、「apt-get update」でデータベースを更新したあと、「apt-get install」を実行するだけで作業は完了した。

$ sudo 
$ sudo apt-get install mpd mpc

SSHでDragonBoardにログインしたところ。サービスはデフォルトで有効なため、IPアドレスさえわかれば接続できる

Linaroのリポジトリには多数の追加パッケージが用意されているため、「apt-get update」は必須だ

これだけでは動作しないため、MPDの設定ファイルもviなどのエディタで書き換える。ハイレゾ再生にはUSB-DACを利用することにすれば、変更部分はごくわずか。編集後にMPDを再起動すれば、MPDに対応したリモコンコマンド「mpc」で再生指示を出すことができる。

$ sudo vi /etc/mpd.conf
$ sudo /etc/init.d/mpd restart


リスト1 : /etc/mpd.confの書き換え箇所(左の数値は行番号)

211 audio_output {
212         type    "alsa"
213         name    "OPPO HA-2"
214         device  "hw:1,0"
215         mixer_type      "disabled"
216         dsd_usb "yes"
217         buffer_time     "200000"
218         period_time     "150000"
219 }

パッケージに「mpd」と「mpc」を指定するだけで、ライブラリなど必要な一式があわせてインストールされる

テストに利用したUSB DACは「OPPO HA-2」。スタイリッシュな外観でDSD再生にも対応したオーディオファン向け製品であり、筆者にとってはRaspberry Piで半年以上、安定運用してきたという安心感がある。Ubuntuベースのディストリビューションで検証するのは初の試みだが、サウンド再生系(ALSA)やUSB Audioのサポートなど基本環境に変わりはなく、ハイレゾ再生もうまくいくはずという目算があった。

結果は……あっけないほどかんたんに音が出た。クライアントはCUI(mpc)を使用したため外観は地味だが、再生品質は上々。ボードがむき出し、給電がACアダプタ経由など全体の雰囲気では「ラズパイ・オーディオ」に譲るが、オーディオ機器としての素地や伸び代については引けをとらない。USB DACに汎用バス(I2S)、HDMIというRaspberry Piと同じ出力経路に加えて、DragonBoardにはオンボードのWi-FiとBluetoothがある。ケースなどアクセサリ類の充実が前提とはなるが、Snapdragonという強力なSoCをコアとしたシンブルボードオーディオの一潮流となる可能性はある。

USBポートに差し込むとOPPO HA-2は認識され、mpcコマンドでハイレゾ音源(96kHz/24bit)を再生できた