別の視点で見れば、Appleの販売大幅増加のタイミングで起きているのは、Androidデバイスの牙城を崩した瞬間であると言うこともできる。特に市場拡大も、Androidしか選べなかったユーザーのiPhoneへの取り込みを実現させることが、成功要因となっていた。
米国ではVerizonであり、日本ではKDDI、そしてNTTドコモのユーザーが、Androidのみの選択肢からiPhoneが選べるようになったインパクトで、先進国市場の動きが変わった。中国においても、AppleのiPhoneがきちんと自国で手に入れられるという環境を作り出し、新たな市場で好調な販売を維持することで、四半期にAppleとしてははじめて、スマートフォン販売でトップの座に輝く経験もしている。
市場拡大、Androidの牙城という2つの要因から考えれば、次にAppleが目指すべきは、インドや東南アジア、中東、中南米、アフリカといった発展著しい各国への取り組みである。もちろん既に販売はされているが、市場に適合している製品とまでは言い切れない。
問題は価格。1台100ドルのAndroidスマートフォンで十分役割を果たしているような国に、649ドル以上のスマートフォンが飛ぶように売れるとは考えにくい。過去にiPhone 5cという価格を抑えたモデルをリリースしているが、iPhone 5sと比較して米国での販売奨励金なしの価格は100ドルしか違わない549ドルで、低価格をアピールするには不十分だったと言わざるを得ない。
iPhone 5cが高価格であったことへの批判に対し、当時、Apple CEOのTim Cook氏は、低価格のデバイスを作りたいのではなく、素晴らしい電話を販売して、素晴らしい体験を共有するのが目的、と答えている。これもまた重要なポイントだ。
価格は途上国ではまだ高めの150ドルから300ドル程度に抑えることで結果は出せるだろう。しかしiPhone 5sとiPhone 5cで分かったように、iPhoneに求められているのは、リンゴマークが輝く高い品質の金属ボディであって、他のスマートフォンとは一線を画した見た目でなければならない。