画面拡大化が不十分だったことも考えられるが、それが5,000万台を超える販売台数のジャンプを作り出す要因とも言い切れない。では、iPhone 6/6 Plus以外で5,000万台を超える増加を達成した年を振り返ってみよう。
それは2012年度の販売である。牽引役は、ちょうど画面拡大があったiPhone 5の前年にリリースされたiPhone 4sで、iPhone史上で初めて前年比プラス5,000万台を達成したデバイスだった(会計年度比の増加数は5,274万台)。
確かにデバイスとしては、3.5インチサイズのiPhoneにして、最も完成度の高い1台、との呼び声も高い。しかしそれ以上に大きな要因だったのが、CDMAキャリアのサポートだった。
オリジナルのiPhoneは、米国のGSM系キャリアであるAT&Tで限定して発売された。当時はまだ2Gしかサポートしていないデバイスだったが、その後iPhone 3Gで3Gをサポートし、日本や香港、シンガポールといったW-CDMAを採用する国や地域でも、iPhoneが利用できるようになった。ただし、2008年はまだスマートフォンの黎明期にあたり、5,000万台というジャンプはなかった。
その後iPhone 3GSまでは、W-CDMA対応のみを行ってきたが、iPhone 4は、発売後にCDMA2000をサポートするモデルをリリースした。そして、iPhone 4sから、発売時にW-CDMAとCDMA2000モデルを用意するようになった。
CDMA2000を採用している主なキャリアは、日本では業界第2位のKDDI、米国では業界第1のVerizon Wirelessである。このキャリアにデバイスを提供できるようになったことは非常に大きく、スマートフォンへの関心の高まりと相まって、最初の5,000万台増加を実現した。
そして、iPhone 5sとiPhone 5cでは、中国で利用されているTD-LTEをサポートし、中国市場への道を開いた。その後のAppleの強力な中国市場への取り組みによって、iPhone 6/6 Plusの世代で、5,000万台以上のジャンプを実現するに至った、と分析できる。