米Microsoftが現地10月6日に開催した発表会では、SurfaceやLumia新製品のほか、Microsoft HoloLensなどの新デバイスについての情報もアップデートされた。

2015年1月に行ったHoloLensのデモンストレーション

HoloLensについてこれまで、発売時期などを明確にしてこなかったMicrosoftだが、今回の発表会ではHoloLensの「Development Edition」の予約受け付けを開始し、2016年第1四半期に3,000ドルで発売することを明らかにした。ソフトウェア開発者向けのHoloLensとなるため、まだまだ実用レベルではないものの、Apple WatchやOculus Riftなどウェアラブルデバイスが我々のIT生活を一変させることは明らかである。

ソフトウェア開発者向け「Development Edition」の予約受け付けを開始した

今回の発表会では、HoloLensを実際に使ったデモンストレーションとして、拡張現実ゲーム「Project X-Ray」と名付けたガンシューティングゲームを披露した。HoloLensをかけたMicrosoft社員の手にはハンドガンが現れ、壁からわき出てくるSF風のロボットを撃ち落とすというシンプルなVRゲームである。

HoloLens経由のプレイ映像と実際の映像(右下)。こうしてみると少々滑稽だが、一度はプレイしたくなる

残念ながらデモンストレーションでは、HoloLensをかけたプレイヤー視点は紹介されなかったものの、その没入感はスマートフォンや据え置き型のゲームとは比べものにならないだろう。個人的に興味を惹いたのは壁やソファーに描かれた映像だ。もちろんこれらはリアルタイム描画されるが、察するに「IllumiRoom(イルミルーム)」に似た技術を用いているのではないだろうか。

詳しくは以前の拙著記事を読んでいただきたいが、簡単に述べるとIllumiRoomはプロジェクターとKinectを使って部屋全体をゲーム画面とする視野拡張システムだ。現在もMicrosoft Researchの研究プロジェクトとして残されているが、HoloLensと組み合わせていくと考えるのが自然だろう。

よくみると壁やソファーにも映像がリアルタイムで描かれている

Kinectとプロジェクターを組み合わせて部屋全体をトレースし、ゲームの視野を直接広げる「illumiroom」。この画像は2013年当時のもの

MicrosoftはHoloLensをゲーム以外にも教育やデザイン、ヘルスケアなどさまざまな用途に使えるデバイスと位置付けており、その可能性は無限大だ。もちろんHoloLensは自己完結型のWindows 10 PCであるため、今後の拡張性にも期待が持てる。

ただし、現時点でHoloLens Development Editionの日本国内の発売時期や不明であり、仮にリリースされてもアプリケーションは出そろっていない。執筆時点ではProject X-Ray以外に、3DモデリングアプリケーションのHoloStudio、SkypeやMineCraftのHoloStudio対応版が予定されている。これらがリリースされてから、自分に必要なデバイスなのか判断しても十分間に合うだろう。

スポーツ向けのウェアラブルデバイス「Microsoft Band 2」

もう一つの注目株は、Microsoft製ウェアラブルデバイスの第2世代となる「Microsoft Band 2」である。第1世代は2014年10月にリリースしているが、日本では未発売のため、その存在を知らない方も多いのではないだろうか。初代Microsoft Bandは10種類のセンサーを備え、心拍数や皮膚温度のモニターリングやGPSによる測定などが可能だった。

「Microsoft Band 2」を紹介するMicrosoft Band and Health担当シニアコミュニケーションズマネージャーのLindsey Matese氏

米国では249.99ドルで10月30日に発売されるMicrosoft Band 2は、新たに気圧計(Barometer)を追加して高度変化や最大酸素摂取量(VO2MAX)の測定を可能にしている。計11種類にセンサーを増やして、日常生活を広くサポートするウェアラブルデバイスに成長した。収集したデータは、健康管理プラットフォーム「Microsoft Health」に集約。ユーザーはMicrosoft HealthのWebサイトや、ユニバーサルWindowsアプリ、iOS/Android向けアプリ経由で閲覧できる。

ユニバーサルWindowsアプリ版「Microsoft Health」。iOSやAndroid版も用意している

Microsoft Band 2の裏側にあるセンサー。ここから各種情報を収集している

もちろんOSはWindows 10のため、Cortanaによる音声コントロールやテキストメッセージへの応答、リマインダーの設定が可能だ。稼働時間はフル充電で約2日間。この点は初代モデルと変わっていない。老人大国になりつつある日本では、ウェアラブルデバイスでメールの着信を知るよりも、健康関連の開発を進めてもらうほうが有益だ。

しかし、249ドルを日本円に換算すると約3万円。健康維持は自己責任という考えが浸透している米国ではニーズの高いデバイスと言えるが、妥当な価格なのか筆者には判断できない。それでも筆者はスマートフォンよりも高精度なMicrosoft Band 2で日々の健康管理への意識を高めたいため、国内販売を切望したい。

すでにiOS版の「Microsoft Health」が使用可能。iOS 9の「ヘルスケア」経由でデータを取得しているようだ。Bluetoothで接続する

阿久津良和(Cactus)