アドテックは29日、カナダDiablo Technologiesが開発、発売するMemory1に関するセミナーを開催した。Memory1はNANDフラッシュメモリを搭載したDDR4互換メモリモジュール。モジュール1枚当たりで最大256GBの大容量を実現する。

会場で展示されたMemory1

最近のエンタープライズ市場では、これまでHDDに格納していた大規模なデータベースをメモリ上に展開することで高速のレスポンスを生み出すIn-Memoryがトレンドとなっている。

一方、サーバにおけるメモリ容量そのものの増加に加え、多くのメモリを利用するためにノードを増やすケースもあることから、システム全体のコストアップ要因となっている。Memory1はこのようなIn-memoryシステムの低価格化に寄与するとしている。

Diablo TechnologiesのGlobal Sales担当Dave Ferretti氏。両手に持っているのはMemory1とMemory Channel Storage(MCS)

説明会ではDiablo TechnologiesのDave Ferretti氏が、Diablo TechnologiesとMemory1について説明を行った。Diablo Technologiesは2003年に設立された会社で2013年に本製品の前身となるMemory Channel Strageを発表、2015年Memory1を発表して注目を集めていると紹介した。

従来、容量と遅延のバランスを考えた場合、サーバーシステムの記憶はメインメモリ(DRAM)と外部高速ストレージ(SSD)の中間にStrage Class Mmemoryと呼ばれるものを使用していたが、Memory1はSSDに使われるNANDフラッシュメモリでこの領域を実現する。

「Diabloの製品によってDRAMとNANDのギャップをうめる」としている

ここ数年、In-Memory DBが各社から登場している。データベースをメインメモリ上に置くことで超高速アクセスを可能とする技術だ

このためDRAMの10倍の密度と1/10の価格、そして1GB当たりの消費電力を3分の1に削減し、さらに通常のDDR4ソケットを使用するため、追加のインターフェースを使用しないことをメリットとして挙げた。

Memory1はCPUやサーバーを変えずにメモリモジュールを入れるだけでOS異存もないのが特徴だという

現在、DDR4モジュールの容量の4倍の容量があり、かつギガバイト当たり単価があまり変わらないのでシステムに大容量のメモリを適用可能だ

通常のDDR4メモリスロットを使うため17GB/秒の転送速度が得られ、かつ低遅延。OSからはブロックされており、ドライバ経由でアクセスする

DRAMに対し10倍のコストメリットと容量、消費電力1/3によってシステムコストと管理コストを下げる

実際のデータセンターにおける活用例として、データベースやキャッシュとしての利用することで、レスポンスが向上したケースや、In-memoryに必要な容量を少ないソケット数で実現できるため、アプリケーションライセンス数とサーバーラックの削減に貢献したケースを紹介した。

Memory1の応用例。4倍のキャッシュを用意することでレスポンスを上げる事が可能となった

ここからは2013年に発表したDDR3/4メモリモジュールの形のブロックデバイス「Memory Channel Storage」の紹介

8ラックを3ラックに減らして、大幅なコスト削減ができただけでなく性能はむしろ向上したという例

こちらはx3950 X6一台にまとめた結果、Oracleのライセンス代を1/10にしたという例。どちらもLenovoサーバーを使っているのは最重要パートナーの一社だから

一般PCユーザーにとっては直接的なメリットのある製品ではないが、インターネットサービスを即応性のあるものとして利用するためには、このような製品が必要になる。また、SATA SSDよりも高速なデバイスとしてMVMe SSDが登場しているが、メモリアクセスを用いるこの製品ならばさらに高速応答が期待できるだろう。

続いてHPC分野における活用例として、HPCシステムズの渡邊氏が登壇。HPCシステムにおける、重要パーツについて説明を行った。

HPCシステムズ HPC事業部 技術グループマネジャーの渡辺啓正氏

HPCシステムズの紹介。会社名が示すようにHPCシステムと産業機械向け組込事業を行う

HPCでの計算は、高精度の演算を大規模にかつ大量に行うのが特徴で、現在は並列処理化が不可欠となっている。計算結果に影響を及ぼしやすいパーツとしてCPUとCPU-メモリ間データ転送を挙げ、システム設計においては多くのCPUから何が最適か選ぶことが重要である一方、メモリはCPUの次に大切なパーツで、計算手法によっては計算時間の足かせになると紹介。

Memory1への期待として、10倍の容量によって二次元演算なら3.1倍の解像度、三次元演算なら2.1倍の解像度になることと、メモリの電力効率が3倍になることでGreen HPCになることを挙げていた。しかし、NANDフラッシュを採用しているためにDRAMよりもパフォーマンスが劣るのは否めず、利用する際には、キャッシュコントロール性能のチューニングがキモになるという。

HPC技術者から見たMemory1の期待度。容量を上げてかつ低消費電力というのが魅力だが、キャッシュコントロールのチューニングがキモになるようだ

HPCのシステム設計で影響を及ぼしやすいのはCPUとメインメモリ。どちらも価格に大きく影響する

展示されたMemory1の評価機。1ソケットあたり4枚のDRAMと4枚のMemory1を使用している

メモリ部のアップ。16GB DRAMモジュールと126GBのMemory1を使用していたので、システムでは128GB DRAM、1TB NANDということになる