筆者は4月24日の発売日から、ステンレススチールでシルバーのApple Watchと、ミラネーゼループの組み合わせで使い始めました。移行、毎日欠かさず装着して過ごしています。Apple Watchをつけて生活した感想と、期待や懸念に対する一定の答えについて、ご紹介したいと思います。

Apple Watch

率直な感想:iPhoneを握らなくなった

Apple Watchを装着し始めてからの大きな変化は、iPhoneを握りしめている時間が減ったことです。これは使い始める前から予測していたことですし、筆者以外の方からも指摘があったことです。 その理由は、iPhoneを触るきっかけのいくつかを、Apple Watchが奪うようになったから、です。iPhoneを触るきっかけは、例えば誰かに連絡を取ろうとしたとき、あるいは何か情報を調べようと思ったとき、写真を撮ろうと思ったとき、メモをしたいと思ったときなど、様々です。iPhoneに入れているアプリの数だけ、動機がある、といっても過言ではないでしょう。

しかし1日の生活を振り返ってみると、もし仕事中にデスクにiPhoneが置いてある場合、あるいはポケットの中に入っている場合にiPhoneを手にするきっかけは、「通知」です。振動もしくは音、その両方とともに画面が点灯し、アプリのアイコンとともにその内容が表示される仕組みで、その通知をきっかけにロック解除をすれば、すぐに最新の情報にアクセスすることができます。

こうしてiPhoneを手にして使い始めると、その通知に関する何らかの行動が終わってからも、同じアプリもしくは他のアプリの情報を「はしご」して行くことがほとんどです。すると、そもそも届いた通知に対しては30秒ほどで確認もしくは返信し終えたとしても、はしごするせいで、iPhoneを触っている時間は3分になり、5分になり、と伸びていきます。もしLINEのようにコミュニケーションが継続する場合、はしご中に返事が返ってきて、もう一軒、もとい、もう一件返事を返して、となっていくでしょう。

このはしごのきっかけとなる通知について、Apple Watchを装着している間は、特に設定しなければすべてApple Watchに届くようになります。カスタマイズしなければ通知で震えっぱなしになるため、これについては後の記事で触れていきたいと思います。

Apple Watchでも同じように、通知の内容を確認することができますが、基本的には「了解」ボタンを押せば消えます。はしごの要素なしに、元々やっていたことに戻ることができます。Apple Watchをつけていると、iPhoneに触れる最も大きなきっかけを与える通知を、手首だけで処理できるようになり、結果的にiPhoneに触れている不用意な時間をなくすことができました。

通知だけでなんとかなる場面が増えてくる

Apple Watchアプリが含まれていたり、通知にカスタマイズのリアクションボタンが用意されている場合は、Apple Watchからコンテンツを見たり、返事をすることもできます。例えばInstagramで投稿に「いいね」がついたという通知が来た場合、どの写真にいいねがついたのかをApple Watchアプリで写真を開いて確認できます。また、Facebookの「Messenger」の場合、「いいね」アイコンを返してリアクションすることができます。

Facebookの「Messenger」からの通知。すぐに「いいね」でリアクションを返せる

個人的に便利に感じているのは、Dropboxに買収されたメールアプリ「Mailbox」の通知です。メールを読むときは、基本的に、いかに不要なメールがメールボックスにない状態にしておくかが重要です。スパムフィルタや受信ボックスをスキップするルール作りは可能ですが、それでもかいくぐってくるメールは存在します。Mailboxは、iPhoneに届く通知も、その場でゴミ箱行き、明日通知、を選択することができます。Apple Watchに届く通知もこれを踏襲するため、Apple Watchから、届いたメールをその場ですぐにゴミ箱へ送り込んでやることができるのです。

「Mailbox」では、サッとゴミ箱行き、明日通知、を選択することができる

Apple Watchを使ってみると、通知に機能や情報がきちんと含まれているアプリに対する好感が高まります。「Yahoo! 天気」アプリは、絵文字を使って天気予報を送ってきてくれるため、時計でも一目で天気予報が確認できて便利です。

「Yahoo! 天気」アプリの通知機能も便利

Apple Watchアプリを作らなくても、通知を上手く活用することで、Apple Watchを生かすことができそうだ、ということも学び取ることができました。

バッテリーは1日半持続する

Apple Watchに対する批判のひとつに、「時計のくせに18時間しかバッテリーが持たないなんて……」というものがありました。自動巻の時計やソーラー発電する時計を使っている筆者としても、バッテリー持続時間に関する感想は同様のものでした。

Appleが発表している通知自体は変化がありませんが、42mmモデルは幾分大きなバッテリーを積んでいるようで、筆者の使い方ではつけっぱなしにしていても1日半は問題なく動作させることができています。そのため、1泊2日の出張に出かけるとき、Apple Watch専用のちょっと長すぎる充電ケーブルをつい何度か忘れてしまうわけですが、1日終える段階で50%ちょっと残っていれば、夜電源OFFにして寝て翌朝再び使い始めても、その日の終わりまでナントカ持たせることができました。思いのほか、電池が持つ、という印象です。

おそらく38mmモデルでは前述の使い方は厳しいだろうなという予測しています。そしてWatch OS 2で時計単体で動くいわゆるネイティブアプリが動くようになると、電池をより消費する場面が増えるだろうな、という予測もあります……。 

時計をする生活に戻った

5カ月の感想、で、そもそもの話をし忘れていたのですが、「時計をする生活に戻った」というのが大きな変化でしょう。それまでiPhoneで済ませていたせいで、腕時計も滅多にしなくなっていましたが、Apple Watchは自然に毎日つけ続けることができる時計となりました。

Watchフェイスは用途に応じてカスタマイズが行える。個人の利用にあったものを選べるのは嬉しい

通知を最適に受け取ったり、後にご紹介するフィットネス機能の継続性に対する挑戦など、Apple Watchをつけ続けて習慣化する工夫が随所に見られ、それらが総合的に作用した結果ではないか、と思いました。

松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura