同窓会の幹事代行といえば、名簿を作成し、参加者の確認、会場や食事などの手配を提供する代わりに、参加者や会場から一定の手数料を得るというのがこれまでの姿であった。

笑屋はこのようなサービスに加え、MITOEに代表されるような地域とつながる機会の提供や、開催した同窓会のクローズドSNSを用意するなどその場だけで終わらないつながりに重点を置いている。また、同窓会に企業スポンサーを募ることで、参加者には会費の負担減を、企業にはリアルな場所でのPRの機会を提供するなど、「同窓会」というイベントを中心に、地域活性化のプロデュース、学校を軸としたコミュニティの再創出、企業と消費者のマッチングといった多面的なビジネス展開を行っている。

同窓会に関わる主なプレーヤ (クリックで拡大)

笑屋では、参加人数や会費の平均額、二次会参加費などをもとに同窓会の市場を、学年単位での同窓会の場合で1開催あたり80万円と計算。これを同窓会代行業者の年間開催実績、また、別途、試算した個人ベースでの開催数をもとに、現在の市場規模を約104億円程度と想定している。

これとは別に、全国の中高、専門学校、大学など約2万校、卒業生が60歳までの間に5年に1回ペースで同窓会が開催されるとして計算した1100億円程度を潜在市場として見ており、この潜在市場への展開をベースに、卒業とともに希薄化していくコミュニティを同窓会をきっかけとして新たなコミュニティとして再創造し維持していく取り組みや、自治体と協力して地域活性化につながる同窓会の企画を進めていく考えだ。

また、同窓会はそれぞれの集団母数は多くはないものの、地域や学歴、年齢などでクラスタリングされたグループがリアルな場所に集うことになる。電通の調査(2015年2月発表)によると2014年のネット広告が初めて1兆円を超え、地上波テレビに次ぐ広告メディアとなった。その中で、同窓会へのスポンサードというリアルな場所でのPRに企業の関心も高いという。デジタルマーケティングの世界では行動ターゲティングや会員情報と連動した広告配信が広がっているが、同じことを同窓会というリアルな場でも行えるというわけだ。

例えば、ある大手家庭塾は、塾に通う生徒ではなく塾の先生募集として、同窓会のスポンサーとなった。生徒募集の広告は、個人情報に厳しくなったとはいえ広告プランニングは比較的構築しやすい。一方で、先生の募集は持家であるかどうか、子どもが自立していて時間に余裕があるか、一定の学歴などと一本釣りでの採用が多い。同窓会では、卒業年(年齢)や学校名(学歴)が明らかで、生活状況などもイメージしやすいため効率的なPRが行え、実際に反応も良かったという。

同窓会にスポンサー出店する企業 (写真提供 笑屋)

同窓会というプライベートに近い空間を企業PRに利用することに違和感もありそうだが、実際は違うようだ。「スポンサード企業がいることで会費が安くなっていることを同窓会参加者は知っていますし、例えば、化粧品会社などのお土産袋(商品サンプリング)も好評です (笑屋担当者)」。

企業側でも場の雰囲気にあったPRを行っている。電子書籍サービスの楽天Koboは、当時はやったコンテンツを用意することで、サービス紹介にとどまらず、同窓会での話題作りの役目も果たした。

同窓会そのものは昔も今も大きく変わることはない。同じ時間を過ごした友人や先生、久しく会うことのなかった仲間と語らう――。ITのおかげで一昔前に比べれば連絡をとるのも手軽になった上に、Facebookでは思いがけない同窓生を紹介してくれたりもする。

しかし、だからこそ、リアルに顔をあわせる場があらためて見直されている。地域活性化にしても企業のPR活動にしても、リアルな人のつながりの持つ力は大きい。拡大する同窓会市場にその期待の一端がかかっており、ビジネスそして地域活性の芽が着実に育っている。