中国の経済情勢は、日本での販売価格とiPhone全体の販売台数を左右する

日本と中国に共通するのは、昨今のドル高、円安・人民元安のトレンドだ。

2014年9月からの素早いペースでの円安進行もあって、AppleはiPhoneの日本国内での販売価格を2度引き上げている。iPhone 6 16GB SIMフリーモデルで比較すると、発売当初は67,800円だったが、現在の販売価格は同じモデルで86,800円。

2015年8月のレートは125円前後になっており、前回の値上げ時のよりもさらに5円ほど円安ドル高が進んでいる。現在の販売価格は1ドル130円台の計算になっていることから、実際のドル円レートだけを考えれば、やや円安トレンドを過剰に織り込んでいるように感じられる。

ただ、ドル円レートだけで決まらないのが日本のiPhoneの価格だ。

SIMフリーモデルは2度の値上げに加えて4カ月余りの販売停止を余儀なくされた。発売時から行列を作って行われていた、日本での購入と中国への転売を問題視していたものとみられる。

日本でSIMフリーモデルを購入したほうが、中国で購入するよりも割安であることから生まれている行動であり、2度の価格調整後であっても、現在のレートでは、前述のiPhone 6 16GBモデルは3万円弱割安だ。

ここにきて、中国経済の先行き不安と立て直しのための人民元切り下げが行われたことから、日本での爆買いとともに、前述のような「iPhoneを日本で買った方が安い」という行動が抑制されることも期待できる。

一方で、人民元建てでのiPhoneの販売価格が引き上げ調整される可能性もあり、価格競争力がないiPhoneの中国での販売に影響が出ることが考えられる。

もちろん、中国経済の低迷や混乱は、チャイナシフトを打ち出してきたAppleにとっての影響は大きいものとなる。iPhoneの販売が、引き続き過去最高を更新し続けられるかどうかは、iPhoneそのものの製品力やブランド力以外の要因が大きくなってきた。

では、次のiPhoneに対する期待はどこにあるのだろうか。次回で触れていきたい。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura