「日本の武道の中で「五輪の競技として見たい」と思うものはなんですか?」

武道の中で最も有名な五輪の競技といえば、柔道。1964年の東京五輪から採用されている、由緒正しき日本発祥の競技です。2020年には開催国からの追加種目が認められるため、この柔道に続けといくつかの武道が名乗りをあげています。

では、海外出身の方はオリンピックでどんな武道を見たいと思っておられるのでしょう。日本在住の外国人20名に「日本の武道の中で「五輪の競技として見たい」と思うものはなんですか?」と質問してみました。

■剣道(トルコ/30代前半/女性)
■剣道(台湾/40代前半/男性)
■剣道(スペイン/30代後半/男性)
■剣道です。(韓国/40代後半/男性)
■剣道と空手です。(タイ/30代後半/女性)

回答が割れた本アンケート。以前「『かっこいい』と思う武道」のアンケートも行いましたが、かなり趣が異なる結果となりました。

現在オリンピックで行われている武道は柔道のみ。オリンピック競技とは、オリンピック憲章の「夏季オリンピックの競技は、男子では4大陸75カ国以上、女子では3大陸40カ国以上で広く行われている競技のみ」との規定に則ってIOCが決定していますが、「当該団体の普及に対する意欲」もかなり大きいそう。

例えば、剣道は「国際化に伴いぜひオリンピック競技に…」という動きの一方、全日本剣道連盟は「勝利至上主義や商業主義に陥り、剣道の持つ武道的特性が失われる」として反対の立場を取っている状況。つまり、積極的に競技化を抑えているわけで、本来の精神を重視していえます(判定基準が審判の一存に頼られ曖昧さも大きく、国際試合では審判が難しいという問題もあるそうですが…)。

■日本の柔道が素晴らしい! 好きでいつも見ているが、技術レベルが高い。(イスラエル/30代後半/女性)
■柔道(イギリス/20代前半/女性)
■柔道(ドイツ/40代前半/女性)
■柔道です。(マレーシア/30代前半/男性)
■柔道です。(ベトナム/30代前半/女性)
■柔道、相撲、弓道、剣道。(ブラジル/20代後半/男性)

唯一のオリンピック競技である柔道。男子は1964年の東京オリンピック、1992年のバルセロナオリンピックから正式種目として実施されています。現在では、重量級、軽重量級、中量級、軽中量級、軽量、軽軽量級と体重別で男女とも7階級に分割され、体格による不公平が出ない仕組みがつくられています。

競技初の金メダルは、東京オリンピックでの軽量級・中谷雄英、中量級・岡野功、重量級・猪熊功の3選手。男子は2008年北京の男子重量級・石井慧選手や軽軽量級・内柴正人選手、2012年ロンドンで金メダルを取った女子軽量級・松本薫選手の活躍などが記憶に新しいのではないでしょうか。近年は海外選手が金メダルを取ることも多いですが、「技術レベルが高い」というイスラエルの方の回答のように、オール一本勝ちによる金メダルの数は日本がピカイチ。1992年バルセロナでは男子78kg級で吉田秀彦選手が全6試合一本勝ち、2008年では女子63kg級の谷本歩実選手が全4試合一本勝ちを達成しています。それだけ、技の完成度が高く美しいということなのでしょう。

■空手(チュニジア/40代後半/男性)
■空手(オーストラリア/40代前半/男性)

空手は169カ国で行われているにもかかわらず、未だオリンピックで採用されていない競技です。筆者も少し前に「2020年、私たちに空手着を着させてほしい――。」というCMをJR内で見ましたが、開催国枠での採用と知名度アップをめざして全日本空手道連盟が流しているそうです。

型と組手の2種類から構成される空手。「かっこいいと思う武道」アンケートでは、回答率がかなり高かった競技です。知名度がさらにあがれば人気も出そうですよね。追加種目の選考にも残っているので、2020年の採用もありえるかもしれません。

■相撲!(ロシア/20代前半/女性)
■相撲(ペルー/30代前半/男性)
■相撲です。(フィリピン/40代前半/女性)
■相撲です。(中国/20代後半/女性)

日本の国技として知られる相撲。国際相撲連盟は空手同様に追加種目として名乗りをあげていましたが、残念ながら落選した模様。女性の参加も広がってきていますが、神聖な儀式という側面が強く、競技人口もまだまだ他の競技に比べて少ないなどの要素もあったのでしょう。また国技館はボクシングの会場となっている点も、今回のオリンピックでは影響していそうです。

■合気道(アメリカ/20代後半/男性)
■居合道(アルゼンチン/30代前半/男性)

海外の皆さんには思想や呼吸法、禅など精神の探求という側面でよく知られた武道2種目。人気はありますが、前述のオリンピック憲章の規約やIOCの判断基準に則した時に議論に上がるまでにはならないのかも。とはいえ、過去のオリンピックでは公開競技としてデモンストレーション的に行われていた回もあるそうです。

■武道はオリンピック競技に入るべきではないと思います(スウェーデン/40代後半/女性)

武道は元々、精神鍛錬と自己研鑽のために行うという意識が大きいものです。柔道や剣道、すべての競技が礼に始まり例に終わるというのも、礼儀を重んじる要素が強いから。その考えを重んじているのが全日本剣道連盟ですが、海外の方からそういった意見が出るのは新鮮。日本の武道の心をよくご存じなのでしょう。

2020年はもうすぐそこ。6月下旬には開催国からの追加種目候補の第一次選考結果のニュースも出され、好きな武道がある人は、その動向から目が離せないのでは。空手のように、オリンピックへの採用を積極的にめざしている武道もあります。どのような形にせよ、競技の本質が世界に正しく伝えられるといいですね。