最適化は「通信の秘密」を侵害?

では、どういった場合に最適化が行われるのか。

ドコモとKDDIは、混雑している基地局がある場合、そのエリアにいるユーザーに対して提供する形で、通信速度が低下している状況に限定し実施しているという。低速の状態のため、これによってユーザーの表示速度や体感速度の向上が期待できるという位置づけだ。通常時は実施されておらず、時間、場所が限定されるため、実際にどのタイミングで通信の最適化が行われるかは分からない。KDDIでは、「実質的に適用されている人はほとんどいない」としている。

こうしたキャリアの「最適化」については、固定・携帯を含めた通信事業者の業界団体が集まって定めた「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」が参考になる。ガイドラインでは、「ネットワークの安定的運用」のために合理的な範囲内で、「個別の同意を得た上で」帯域制御を実施することを求めている。

ガイドラインでは、

(1)P2Pファイル交換ソフトなどの特定のアプリケーション
(2)ユーザーごとの転送量の基準を設定し、それを超えたユーザー

という2つの制御方法を対象としており、(2)は3日間1GBといった制御がそれにあたる。

今回の帯域制御は(1)にあたるが、「画像ファイル」「動画ファイル」といった具合に範囲が広いのが1つの問題点だ。

こうした帯域制御は、電気通信事業者法第4条に定められた「通信の秘密」に抵触するため、ガイドラインではこの点についても検討されている(ガイドラインは帯域制御が明確に「侵害行為に該当する」と記載している)。

「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」には、帯域制御が「通信の秘密」に対する侵害行為に該当すると明記されている