「個別かつ明確な同意」の再検討が必要

今回の騒動は、「通信の秘密の侵害」「画像や動画が改変される」という2点が大きな問題だ。「通信の最適化」自体は通信の秘密を侵害しており、違法性を阻却するためには「個別かつ明確な同意」が必要となる。キャリアは、改めてこの「個別かつ明確な同意」について検討すべきだろう。

少なくともドコモとKDDIは、混雑時の高速表示というユーザーへのサービスを目的としているため、デフォルトはオフで、ユーザーが希望すればオンにする、という手法であれば、機能をオンにする際に個別かつ明確な同意を取得しやすいはずだ。

ソフトバンクは帯域制御を目的とする以上、デフォルトオフでユーザーの設定に任せるのは難しいだろうし、実際にユーザーが制御することはできない、としている。それであればこそ、個別の同意取得はより明確に行うべきだ。また、不必要なレベルでの帯域制御はガイドラインに違反する可能性もあり、そうした点も明確な説明が必要だろう。

なお、総務省の総合通信基盤局消費者行政課では、「通信の最適化」についてキャリアと接触したことはないようで、あくまで一般論としつつ、帯域制御の運用基準に関するガイドラインに基づいて実施されているのであれば問題視しないという見解を示している。

画像や動画の改変に関しては、幅広く圧縮、変換し、しかも復元できない不可逆的な処理をするため、元の動画像所有者が意図しない改変となってしまう。画質劣化はユーザー側のデメリットではある。無線LAN利用などで回避する方法もあるが、そもそもキャリアが通信内容を選択して制御するという行為の必要性の問題がある。

低速時の表示速度改善をユーザーが希望した場合、というレベルであれば、それは個別の選択であるため、もちろん実施することは問題ない。ただ、デフォルトオンである必要はないだろう。帯域制御が目的であれば、そもそも3日間1GBなどの制限を設けている以上、画像や動画を狙って制御をする必要性が感じられない。ガイドラインが想定していたのは、P2Pのファイル交換ソフトのようなアプリケーションのようだが、動画や画像を制御するのは不必要ではないだろうか。