線の細い繊細な描画による、圧倒的な解像感が魅惑のXマウントレンズの数々。発売から3年を経て20本を超えるラインナップは、富士フイルムのXシリーズを「使いたい」と思わせるもっとも大きな理由となっている。そして6月25日、最新のカメラとして「X-T10」が登場。シリーズのフラッグシップである「X-T1」の弟分的ポジションながら、性能では決してひけをとらない、いや、部分的には「超えた」とすら感じさせる、実力派のプロダクツに仕上がっている。

FUJIFILM X-T10

まずは外観から。デザインが「古い」

のっけからまるで斬り捨てたような小見出しを付けてしまったが、それはむしろ称えているのである。そもそも、タイムスリップしたかのようなレトロなボディデザインは、これまでもXシリーズのアイデンテティだったのだ。それは多くのファンから肯定的に受け入れられてきた。つまり、一般人にはもはや銀塩カメラにしか見えないX-T10もまた、ユーザーの嗜好に応える正統なデザインなのだ。

W118.4×H82.8×D40.8mmと非常にコンパクトなボディ

ボタン類の操作性は総じてよく練られている。X-T1で押しにくいと不評だった十字キーも改善された

マグネシウム合金を使用したボディ外装も、往年の銀塩カメラがそうだったように、作りの良さとひんやりした手触りを思い起こさせる。ボディカラーにはシルバーとブラックの2色が用意されるが、シルバーの方がより古めかしい雰囲気だ。きっと、発売後もシルバーモデルが人気となるだろう。実はメーカーの試用機も、シルバーのみ順番待ちだった。作例撮影においては、ブラックボディの方が被写体に写り込みにくいにも関わらず、だ。そう、みんな、古いのが大好きなのだ!

グリップは形がキレイで持ちやすい。グッタペルカ(張り革)のグリップ感もいい

トップカバーの質感、ダイヤルのローレット処理など、「これぞカメラ」というデザインが、所有する喜びを与えてくれる

この「いかにも写真機という雰囲気」あふれるデザインの方向性は、社名に「フイルム」を冠するフジだからこそ説得力があるようにも思える。少々情緒的に書くならば、Xシリーズはカメラファンにとって最後の砦なのだ。デジタルカメラは家電といわれて久しいが、それでも我々カメラ愛好家は、やはり写真機であって欲しい。銀塩文化の代名詞ともいえるフジが、このクラシカルなデザインラインを堅持してくれることは、そんな我々に心の安寧をもたらしてくれるとはいえまいか。