Googleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」の基調講演では、次期Androidのプレビュー版「M Developer Preview」をはじめ、様々なトピックスが出た。今回の発表会、日々、モバイルニュースを追っているライターの目にはどう映ったのか。ライターの塩田紳二氏に基調講演をもとにGoogleの方向性を考察してもらった。
Android "M"の目標は「質」の向上
まず、Android "M"について。Android "M"の目標は、「質」の向上だ。現在のLollipopことAndroid 5.xは、大きなバージョンアップだった。Java実行環境のARK、電力管理、64bit対応など、大きな変更が含まれている反面、出荷後のアップデートの頻度も高く、まだ安定していない印象がある。こうしたことから、さまざまな修正を行い、安定したバージョンにするというのがAndroid "M"の一番の目標なのではないかと考えられる。実際、基調講演で紹介された変更項目は、実際にはどれも「小粒」な感じがある。システム根幹部分の大きな変更を避け、細かい部分の改良と内部の更新が中心なのだと考えられる。
Android Payなどは、大きな機能追加だが、どちらかというと、対応する流通業界やクレジットカード会社などに対する働きかけなどのほうが大きく、システムからみれば、アプリやAPIの追加に過ぎず、Android "M"でなければできない固有の機能強化ではない。場合によっては、現在多くのアンドロイドで動いているKitKatなどでも動くのではないかと考えられる。
また、"Now on Tap"などの機能強化が行われるGoogle Nowも、現在では「Googleアプリ」として、システムとは別にアップデートが可能なもの。必ずしもAndroid "M"を必要とするようには見えない。
Lollipopは、昨年11月からNexus 9が出荷されたが、その採用は意外にすすんでおらず、現状アンドロイド全体の1割程度でしかない。しかし、すでにバージョン番号的には5.1.1に到達している。各社とも、急いでLollipopを搭載しているようには見えず、たとえば、ドコモのラインアップを見ると、夏モデルでようやく全機種がLollipop搭載となったが、冬春モデルではKitKat(4.4)搭載機種だけだった。Android "M"がこの7~9月に出ることを考えると少しタイミングが遅い感じだが、これは、おそらくAndroid "M"が見えてきたために各社ともアップデート前提で5.0の搭載に踏み切ったのだと思われる。
基調講演では、テキストのコピーなどをフローティングメニューとして表示(現在は画面最上部に表示)することや、ボリュームの変更画面の変更など、細かい使い勝手に関するものが紹介されていたが、この手の変更は結構多いのではないかと想像される。このあたりはユーザーの不満をすくい上げて、印象を改善したいという意図が見える。