三菱電機は5月28日、IHジャー炊飯器「本炭釜」の10周年記念モデルとして、デザインを一新した「本炭釜 KAMADO NJ-AW106」(以下、NJ-AW106)を発表した。本稿では、同日に開催された製品発表会の様子をレポートする。

発表会には三菱電機ホーム機器 取締役社長 田代正登氏が登壇し、製品開発の背景や製品の機能について説明した。

本炭釜 KAMADO NJ-AW106。推定市場価格は税別120,000円前後

「本炭釜」で高級炊飯器の市場をけん引

新製品を紹介する三菱電機ホーム機器の田代正登氏

三菱電機のIH炊飯器「本炭釜」は、2015年で10周年を迎える。田代氏によれば、2006年に初代モデルを発売してからというもの、三菱電機の本炭釜は高価格帯の炊飯器市場形成に貢献してきた。

本炭釜シリーズ最大の特徴はなんといっても、炭を削ってできた内釜。職人の手作業によって一つ一つ丁寧に作られており、完成には約100日かかっている。NJ-AW106で採用している本炭釜は純度99.9%の炭からできており、高い遠赤外線効果を持つ。釜の厚さは最大10mm。田代氏いわく、炭はIHとの相性が良い素材で、発熱に必要な磁力線が釜厚全体まで浸透する唯一の素材だそうだ。釜全体が発熱するため、米を効率よく加熱できる。

本炭釜の初代モデルを発売した2006年あたりから、炊飯器市場は単価が上昇。田代氏は「プレミアム商品の市場形成に貢献できているのでは」と語る

炭のカタマリを削り出して内釜を作る。そのため、内釜にはシリアルナンバーが付与される

炭は、発熱に必要な磁力線が釜厚全体まで浸透する唯一の素材。田代氏いわく、金属は表層しか発熱しないとのことだ

「かまど炊き」を追求

炭を用いた内釜は踏襲しながら、今回の新モデルでは「かまど炊き」のおいしさを追求。かまどのメカニズムを研究し、「羽釜形状」「高断熱」「大火力」という3点が重要だという結論にたどり着いた。

かまど炊きを再現するべく、メカニズムを研究

そこで、新たに内釜を羽釜形状にしたほか、10mmの断熱材の追加、本炊き時の電力量アップなどの工夫を施した。その結果、粒感がしっかりしていながらも中はみずみずしいご飯を実現。田代氏は「従来の炊飯器では、粒感とみずみずしさは両立するのが難しかった。しかし、NJ-AW106ではかまどで炊いたような食感のご飯を炊ける」と自信を見せた。

羽釜の羽より上部はふきこぼれを抑制するための空間(写真左)、羽より下部は加熱空間(写真中)。上部空間の体積を約63%拡大したため、吹きこぼれる心配がなく、加熱空間における大火力での連続沸騰が可能になった。最大炊飯量は羽より下の加熱空間にすべて収まる設計だ(写真右)

10mmの断熱材を追加したことで、高効率の加熱を実現。羽釜形状との相乗効果で、火力は約28%向上した

粒感があるのにみずみずしさも保っているご飯を実現した

おいしさを視覚的に伝える「実りの形」

大きく変更されたのは内釜だけではない。デザインも一新され、従来モデル「NJ-XW105」の四角い形状から丸みを帯びた形状になった。断熱材の追加といった、かまど炊き実現のために必然だったデザインの変更だが、機能面だけではなく、おいしさを視覚的に伝える役割も果たしている。手のひらで握ったおにぎりや、旬になって熟れた果実、ふっくらと焼きあがったパンなど「実りの形」というデザインコンセプトのもと、設計された。

実りの形というデザインコンセプトを採用

左は従来モデル「NJ-VW105」、右は新モデル「NJ-AW106」。操作部や開閉ボタンは大きく変わっていないが、四角から丸になってずいぶんと印象が変わっている

「KAMADO」で炊いたご飯を試食

発表会参加者には、炊きたてご飯とおにぎりが提供された。いずれも「ひとめぼれ」を、米の銘柄ごとに適した設定で炊いてくれる「銘柄芳潤炊き」で炊いたものだ。つやつやしていて、見た目にもおいしい。実際に頬張ってみると、確かにみずみずしいのにベチャっとしておらず、粒感があるのにカタすぎない、絶妙な食感であった。口に含んだ瞬間に甘みを感じ、鼻に抜ける香りも存分に感じられた。おにぎりはご飯が冷めているにもかかわらず、甘みをキープしていておいしかった。

お茶碗には炊きたてご飯がよそってある。食べる前からふんわりといい香りがしていた

粒がしっかりしているという印象。かといってパサついているわけではない

おにぎりは冷めてもおいしかった。塩など何も味付けをしていないのに、これだけでも十分おいしい

炊飯後に手入れするパーツは内ブタ部分にまとまっている。従来モデルでユーザーから出た不満を解消したとする(担当者)

カラーはプレミアムホワイトブラウン(写真左)とプレミアムホワイト(写真右)