市場が広がりを見せる人工知能の研究開発で日本が立ち後れつつあることが、特許庁が19日公表した特許出願技術動向調査報告書で明らかになった。

特許庁は、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、毎年、特許出願技術動向調査を実施している。昨年度は、19の技術分野について、市場環境、各国・地域の政策動向、特許出願状況、研究開発動向を調べた。人工知能は、19の技術分野の一つだ。

調査の結果、インターネットの普及により加速度的にデジタルデータ量が増加し、これらのビッグデータを利用した人工知能技術、特に機械学習による技術の進展があるなど、幅広い応用産業分野が人工知能技術の対象市場となる可能性を持つことが明らかになった。

米国が、国防高等研究計画局(DARPA)の資金による研究開発プロジェクトを早くから実施しているほか、欧州も機械翻訳、自動走行、 ロボットなどを含む研究開発を推進しようとしているなど、米国、欧州、中国、韓国いずれも人工知能分野を重視する政策をとっていることも分かった。

日本、米国、欧州、中国、韓国の特許出願件数を比較すると、日本国籍の出願件数は5カ国・地域全体の15%程度と、ある程度の位置を占めている。しかし、論文件数は欧州国籍が 3 割強、米国籍、中国籍が約 2 割となっているのに対し、日本国籍の論文件数比率は約 2%にすぎず、日本の存在感が薄くなっている実態も明らかになった。

特許庁は、こうした調査結果から「全産業分野を対象市場と捉え、高性能な人工知能技術を提供するため、基盤技術、応用技術の研究開発を進める」ことを提言している。さらに若手人材を育成するため「さまざまな分野に特化した基礎的技術の研究者が多く集まる研究機関などと、大量のデータを保有し課題の把握力にたけた企業などが連携する研究体制の構築」と、「増大する大量のデジタルデータを収集することに加え、収集したデータを人工知能の学習のために活用することができる環境を整える」ことも提言している。

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