FOVE社は5月19日、VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「FOVE」の量産に向け、Kickstarterを利用した資金調達を開始した。「FOVE」は眼を覆うように装着するHMD。微妙な目の動きを追跡することでユーザーが見ている空間を算出し、没入感の高い仮想世界を体験できる。

合わせて、都内でキックオフイベントが開催された。イベントでは女優の池澤あやかさんをゲストに迎えたトークセッションが行われたほか、FOVEを使って目線でピアノを演奏する沼尻光太さんへのインタビューも実施。また、FOVEの実機を用いた体験会も開催された。ここでは、その様子をお伝えする。

「FOVE」のKickstarterページ(5月20日時点)

VRには3段階の進化がある

FOVE社CEOの小島由香氏

イベントでは、まずFOVE社の小島由香CEOが登壇し、世界的に注目を集めているバーチャルリアリティ(VR)の現状を説明した。

小島氏は「VRには3段階の進化がある」とし、360度の視野角などによってユーザーが仮想現実世界の存在を現実のように感じる"プレゼンス(存在感)"の実現を第1段階、ハンドトラッキングやモーションコントローラーなどによって仮想現実世界を操作する"コントロール"の実現を第2段階と定義。

「私たちが目指すのは、その次にある第3段階の"感情表現"。たとえば、見つめることでキャラクターのリアクションを得るなど、感情のやりとりができるようになる。FOVEでユーザーの感情を仮想現実世界に持ち込む手助けをしたい」と語った。

小島氏によれば、第2世代の"コントロール"においてもFOVEは優位性があるそうで、「FOVEはユーザーの視線を検知する視線追跡技術(アイトラッキング)を採用することで、現在のHMDの問題点であるパララックスエラー(視差によってポインティングにずれが生じること)を解決しようとしている。シューティングゲームなどでは、マウスを使った操作よりも素早く照準を合わせられるため、より快適で自然な操作が可能になる」とコメント。

ちなみに、FOVEではユーザーが注視している部分に高精度なレンダリングパワーを集中させ、見ていない部分を低解像度でレンダリングする「フォビエイテッドレンダリング」という技術も採用しており、従来に比べて6分の1程度のPCパワーですむのも特長とのこと。

そのため、小島氏は「スペックの低いマシンでもVRを実現できる」とし、「近い将来、ノートPCやスマートフォンなどでもVRを楽しめるようにしていきたい」と意気込みを見せた。

FOVEの映像イメージ(左右に映像が分かれているが、実際は立体映像に見える)