テレビ事業の黒字化は大きな意味を持つが……

2014年度 連結業績見通し

一方、2014年度の連結業績は、売上高が前年比5.8%増の8兆2,158億円、営業利益は158.7%増の685億円、税引前利益は54.3%増の397億円、当期純利益は前年度の1,283億円の赤字だったものが、1,259億円の赤字となった。

「売上高は円安がプラスに影響している。利益については、モバイル・コミュニケーションズ分野が悪化したが、デバイスを中心に損益が改善。2014年度の構造改革は、ほぼ予定通り実行ができた。販売会社で20%、本社30%として固定費削減は達成。2015年度見込みで1,100億円の費用削減(2013年度比)を実現できる」とした。

セグメント別の業績は、「モバイル・コミュニケーションズ」の売上高が前年比11.0%増の1兆3233億円、営業損失は2,330億円減のマイナス2,204億円の赤字。「営業権の減損により、1,760億円を計上しており、これを除くと444億円の赤字になる。ドル高や引当金が赤字の要因」とした。

「ゲーム&ネットワークサービス」の売上高は前年比33.0%増の1兆3,880億円、営業利益は669億円増の481億円と黒字転換した。PS4が好調を維持。PS4は前年度の750万台に対して、1,480万台を出荷したという。

「イメージング・プロダクツ&ソリシューション」は売上高が2.9%減の7,200億円、営業利益は284億円増の547億円。「高付加価値ビジネスが好調であった」という。

「ホームエンタテインメント&サウンド」の売上高は前年比3.3%増の1兆2,073億円、営業利益は456億円増の201億円。テレビ事業は83億円の営業黒字。「テレビ事業の黒字化によって事業を継続できることは大きな意味がある。黒字化したのは、過去3年に渡って、大幅に固定費を縮小してきたことが最大の要因。いたずらに量を追わず、販路を絞った。2015年度もさらに台数を減らすことになる。4月1日付の組織改革において、テレビのマネジメントと販売会社を実質的に一体化した。これは今後のテレビ事業において、重要な意味を持つことになる」と述べた。

2014年度 セグメント別業績

液晶テレビの販売台数は、2014年度実績で1,460万台と、前年度の1,350万台からは増加しているが、2015年度は1,150万台にまで絞り込む。

「デバイス」の売上高は23.9%増の9,578億円、営業利益は1,055億円増の931億円と黒字転換した。

「映画」は売上高が5.9%増の8,787億円、営業利益は69億円増の858億円。前年度に比べて劇場興行収入の減少。また、サイバー攻撃対応に関する費用として、49億円を計上したという。

「音楽」は売上高が8.2%増の5,446億円、営業利益は88億円増の590億円。デジタルストリーミング配信の売上が増加した。ただし、音楽ディスク事業については、「国内では利益を計上しているが、海外事業では2年間合計で約500億円の損失を計上しており、CFOとして大変反省している」と述べた。

「金融」は売上高が9.0%増の1兆836億円、営業利益は230億円増の1,933億円。その他事業は売上高が42.8%減の4,911億円、営業損失は327億円増となったものの、1,034億円の赤字となった。

一方、分社化のスケジュールについては、2015年10月にビデオ&サウンド事業を予定通り分社化することを示す一方で、「他のセグメントは具体的に言える段階にはない」(ソニー経営企画管理部シニアゼネラルマネージャー VPの武田和彦氏)と述べた。

今回の業績発表では、11年ぶりとなるテレビ事業の黒字化が大きな成果だったといえるが、2015年度の黒字幅も小さく、以前として販売台数の縮小路線を余儀なくされることを考えれば、吉田CFOが語る「病み上がり」という言葉は、テレビ事業にも当てはまるだろう。

その一方で、中期的な成長を担うデバイス事業が、その軌道に乗っていることを示した点では大きな成果がある。だが、過去に何度も下方修正を繰り返してきたソニーだけに、2015年度以降の成長戦略の数値を鵜呑みにするとはできないという見方があるのも事実。第1四半期から、成長の道を着実に歩んでいる成果を示す必要がある。