さて、先に登場したBoscovich氏も、「(PhotoDNAは)無料でライセンス提供を行い、FacebookやTwitter、Googleなど大手企業が使用している。各社の通報によって、昨年(2014年)は58件の犯罪者を検挙した」とPhotoDNAの能力をアピール。今回の発表会には自民党のIT戦略特命委員会に参加する平井卓也参議院議員や福田峰之参議院も参加し、官民一体となってサイバー犯罪に取り組む姿勢があることが確認できた。

再び登壇した日本マイクロソフトの樋口氏は、安倍晋三総理大臣の言葉を借りて、「日本の経済成長やイノベーションにサイバー空間は不可欠」と語り、日本マイクロソフトはセキュアなクラウドサービスを提供して、サイバーセキュリティの確保に徹することを強調した。その具体的なアクションとして、政府機関や企業内のセキュリティレベルを評価し、改善点を提案するアセスメントサービスや、組織に対するゼロディ攻撃などを検知・監視するサービスを提供するという。

日本拠点としては米国本社のDCUと連動はもちろん、政府や企業向けのリスクアセスメントや脅威検知サービスなどを提供することを明らかにした

気になるのは、米Microsoft本社のように、政府機関と連動したサイバー犯罪者に対する対応ができるのか、という点である。日本マイクロソフトのチーフセキュリティアドバイザーである高橋正和氏は「(我々としては)日本の法律に従う必要があるため、あくまでも事例ベースとなる。当初はサイバー犯罪が発生した際の協力体制にとどまる」と語った。もっとも、ニーズの高まりに応じて、スタッフなど日本サテライトに所属するメンバーの拡充や活動は柔軟に行うという。

日本マイクロソフトの高橋正和氏

我々はサイバー犯罪に対する意識改革を求められている。しかも早急にだ。そして信頼できるIT環境の重要性は、特に本誌の読者諸氏なら、(政府機関が論じなくとも)肌で感じているだろう。今回の日本サテライト設立によって、サイバー犯罪やセキュリティの状況がすぐに改善するとは言い切れない。だが、今後も増加するサイバー犯罪の抑止や安全性に寄与する大きなアクションといえるだろう。「マイクロソフト サイバークライムセンター 日本サテライト」の活躍に期待したい。

阿久津良和(Cactus)