Pirates(パイレーツ)、Warez(ウェアーズ)、Crack(クラック)……。呼び方は多様ながらも、ソフトウェアを購入せずに使用する不正(違法)コピーは、PCが"マイコン"と呼ばれていた時代から行われてきた。そして今も絶えず繰り返されている。自身が手に染めなくとも、自分の周りで不正コピー品を利用している人に出会うこと、出会ったこともあるだろう。

このような背景から、ソフトウェア産業のけん引を目的に米国で設立され、1992年から日本国内で活動を開始したのが、BSA(ザ・ソフトウェア・アライアンス)だ。1995年にはホットラインを開設し、不正コピーの撲滅を目指してきた。BSAには毎年の平均で400件程度の不正コピー情報が集まり、2013年の不正コピー率は19パーセント(当時の為替レートにおける被害総額は約1,419億円)。2011年の調査結果からは2ポイント低下したが、依然高いままである。

そのBSAは2015年2月16日に都内で、近年変化しつつある国家機関の対応や新たな施策を発表した。今回は国内における不正コピー問題の背景と現状を踏まえつつ、不正コピーの状況をお伝えしたい。

まん延する企業内不正コピーの状況

BSAの調査によると、日本国内の組織内不正コピー率は、2013年の時点で19パーセント。その被害総額は約1,400億円と、途方もない金額だという。登壇したBSA日本担当顧問弁護士の石原修氏は、2003年からの調査結果を示したが、当初は29パーセントだ。つまり調査した約3割の企業に、不正コピーがはびこっていたことになる。

一方で不思議なのが被害総額の推移だ。下図のように不正コピー率の変化と異なり、被害総額は1,800億円前後の時期が多い。この点について石原氏は「(当時のソフトウェア)市場規模が大きかったため」と説明した。

日本担当顧問弁護士の石原修氏

2003年から2013年における国内の組織内不正コピー率とその被害額

さらに不正コピーに対するBSAへの通報件数は、2007年の506件から2012年の296件へと順調に減っているように見えるが、2013年から再び増加傾向に。これはBSAが同年から実施してきた、組織内不正コピーの解決につながる有力情報提供者に対して、報奨金を提供するプログラムが大きく影響しているのだろう。

2007年から2014年までの通報件数。2012年に向けて減少傾向にあったが、約460件/年の通報が寄せられているという

BSAは寄せられた情報を加盟する該当企業に提供し、著作権の権利行使に用いるが、「必ずしも裁判につながる訳ではない」(石原氏)という。提供情報に基づいて、著作権保持者と不正コピーを見逃してきた企業が和解するケースも少なくない。だが、その金額は4億円に及ぶものもあり、企業経営を揺るがしかねないと石原氏は語る。この情報をあるセミナーで紹介したところ、参加者からは「大企業の数字」という声が寄せられたという。ここで次のスライドに切り替わった。

BSAへの提供情報に基づいて不正コピーの事実が発覚し、和解に至ったケース。損害賠償金額は最高で4億円にも及んでいる

先の4億円に及んだ和解例は、従業員500名以下に類するソフトウェア開発企業のものだ。過去のリリース記事を調べてみると、2011年9月の和解例がヒットした。こちらのリリースによれば、Adobe PhotoshopやAutodesk MAYA、Microsoft Officeなどの不正コピー品が、合計1,300本も社内から発見され、先の損害賠償金額に至ったと説明している。不正コピー品を利用していた企業の概要や規模を知るすべはないものの、相当なダメージだったはずだ。

従業員500名以下の中小企業における和解例。1位に並ぶソフトウェア開発企業は、Adobe Photoshopなど高額なアプリケーションを多く不正使用していたという