さらに、今後は携帯キャリアとの確執も考えられる。Google Walletを搭載した「Galaxy Nexus」は、携帯キャリアによって拒否されたが、AppleのiPhoneはそうではなかった。その一番大きな違いは「iPhoneの存在感」だ。すでにiPhoneは各携帯キャリアにとって重要な商材となっており、この取り扱いを拒否することはユーザーの離反を招き、ビジネス損失を意味する。また、Softcardのソフトローンチからわかるように、携帯キャリア側のモバイルNFC戦略はうまくいっているとは言い難く、ここ1~2年はかなり競合技術やサービスに寛容となってきている事情がある。

Appleはこの間隙をうまく突いてApple Payのローンチを行った印象だ。一方で、携帯キャリアが中のサービスに直接関与できないiPhoneに必ずしも良い印象を抱いているわけではなく、これはApple Payについても同様だろう。直接の競合としては、携帯キャリア連合のGSMAでも大きな力を持つOrangeがフランスで「Orange Wallet」のサービスを提供しており、遠からずAppleと衝突すると予想している。

国や現地企業の意向を無視してのサービス展開が難しい中国ではどうか。例えば銀聯カード(UnionPay)の受け入れに関して、中国移動通信(China Mobile)などと何らかの協力体制を持つ可能性はある。実際、App Storeに関しては、UnionPayの受け入れがスタートしておりオンライン決済のAlipayで大きなシェアを持つAlibabaとの提携の噂もある。ある程度はリージョンによって戦略を変えてくるかもしれない。

銀聯マーク。このロゴが入った銀行カードはすでに20億枚以上発行されているという