話は変わるが、UNI-CUBβは全長510mm×全幅315mm×全高620mm、UNI-CUBの520×345×745と比較すると小型化している(画像21・22)。これはUNI-CUBを用いた共同実証実験で、小学生だと乗れないのでもう少し小さくしてほしいという要望が出たことに対応した結果であることを小橋氏が説明してくれた。

今回、身長145cm以上となったことで、小学生でもだいぶ乗れる人数が増えたはずだ。2013年度の平均身長で見ると9歳小学4年生は男女ともにが133.6cm、10歳5年生は男子が139cm、女子が140.1cm、11歳小学校6年生は男子がちょうど145cm、女子が148.7cmということなので、6年生になればクラスの半分ぐらいは乗れるということだろう。クラスの一番後ろにいるような成長の早い子は4年生ぐらいからも乗れるのではないだろうか。

画像21(左):左がUNI-CUBβで右がUNI-CUB。UNI-CUBβはかなり全高が抑えられているのがわかる。全長はわかりにくいがわずかに小さくなっている。画像22(右):全幅もスペック的には3cmほど小さくなっているが、デザイン的にUNI-CUBの方が細身に見えてしまう

しかし、この小型化を実現して小学生でも乗れるようになったメリットがある反面、筆者のような大柄な人間(182cm)が乗ると、ちょっと自分の体格に合っていない背の低いイスに腰掛けているようで、機体のホールドの話でも触れたが、足を持て余してしまう感じだ(別に筆者は座高に比べて足が長いわけではないのだが、身長があるので絶対的な長さがある)。走行中はステップに足を載せられるのだが、決してきついほどではないのだが、UNI-CUBβがどうしても小ぶりなのでその結果ホールドがうまくできないとなってしまうようである。ちなみにUNI-CUBβのシート高は620mmで、UNI-CUBの745~825mmと比べると結構低くなっている。

この点は小橋氏も痛し痒しというところのようで、UNI-CUBのアジャスター機能を復活させることも検討しているそうなのだが、そうした機構を組み込むと結局は機体が大きくなってしまう可能性があり、そうするとまた乗れる小学生が減ってしまうので、なかなか難しいようである。まぁ、大柄だから乗れないというわけではないので、ここは将来を担う子どもたちのために貴重な体験をしてもらうためにも、大柄な人はちょっとガマンしてあげよう。

また、要望としてUNI-CUBβになって加えられた要素が本体に直接備えられたスタンド(画像23)。シート後方にあるレバーを操作すると(画像24)、ステップが動いてスタンドになる(動画8)。スタンドとステップは一体化しており、スタンドを出すとステップがボディに沿う形となり、スタンドを引っ込めるとステップが横に張り出すようになっている。レバーを引き上げるとスタンドが出て、下に倒すとステップになる形だ(動画8)。なぜスタンドが設けられたのかというと、UNI-CUBの場合は電源を落としても倒れないようにするには、外付けのスタンドにセットする必要があったからである。要は、UNI-CUBβは単体でも電源を落としても立たせておけるようになり、より実用性が上がったというわけだ。

画像23(左):UNI-CUBにはなかったスタンドがUNI-CUBβには装備された。画像24(右):本体後方、シート下のレバーを下に倒すとステップになり、引き上げるとステップが畳まれてそのままスタンドになる

動画
動画8。スタンド状態からレバーを下に倒してステップに。これで1輪状態

ともかく、こうしてホンダとしては初となる、また国内の屋外施設としてもおそらく初となるパーソナルモビリティの商用サービスがスタートしたわけで、ぜひ広まっていってほしいと思う。ただし、展示施設などでのツアーには今回のサービスによって利用できることが証明されたわけだが、利用者が一定時間内は自由に動き回れるという本当の意味でのレンタルサービスを実現するには、安全性の確保(搭乗者が危険走行をする可能性がある)やどれだけの台数を用意すればいいのか、また台数を増やした時の待機・保管スペースをどう確保するかといったさまざまな課題がある。

ホンダとしては、UNI-CUBβのようなパーソナルモビリティをレンタルで自由に乗れるようにするには、警備員を増やして危険走行をしないように監視を徹底するというよりも、間違った乗り方をしてはいけないというリテラシーの方をしっかりと普及させて、大人が見ていない子どもたちだけの状態でも危険な乗り方はしないようにしたいという考えだそうだ。

また、ショッピングモールや空港などで利用するには、一方向の移動のみに使う乗り捨てなども含めて、さらに運用面でのノウハウを蓄積する必要があるし、展示ツアーには腰掛け型のUNI-CUBβは乗ったままでも展示物に近寄れるメリットがあるが、ショッピングモールや空港などの人混みの中では、視線が低くなるせいで先を見通しにくいというデメリットもあるわけで、立乗型とどちらが適しているのかといったことも比較検討する必要があるかも知れない。

などと普及には色々と課題や検討事項があるわけだが、今回の商用サービスはパーソナルモビリティの普及を占う上での重要な新サービスなのは間違いないだろう。UNI-CUBβのレンタルサービスが「珍しいものの体験したさ」で短期間で飽きられてしまうのか、それともASIMOのように、未来館で活躍するようになってとても時間が経つのにいまだに飽きられずに、毎回のデモの時には社会科見学の子どもたちから外国人観光客まで、平日でも大勢が足を止めて見ているような存在になれるか、見守っていきたいところである。

ちなみに取材した10月1日は東京都民の日なので、ゴールデンウィークかお盆か(それも雨の日)というぐらい賑わっていたこともあったが、子どもたちの注目度は高いし(乗っている人の視線が大人でも低いので怖がる子は見かけず、興味を持つ子の方が多かった)、乗りたがっている高校生女子の仲良しグループなどもいた。UNI-CUBβに乗りたいから未来館に行くという、集客力のある未来館の体験型コンテンツに育ってほしいものだ。

あと筆者が個人的にぜひとも未来館で実現してほしいこととして書いておきたいのが、同館が中立の立場であることを利用して、トヨタの立乗型パーソナルモビリティ「Winglet」もこの商用サービスで共同運用するか、もしくは共同実証実験としてラインナップに加えられないか、というところ。もちろん、ホンダとトヨタという、世界でも競い合う大自動車メーカー同士である以上、なかなか難しいところはあるのは十分承知である(Wingletは現在、つくばモビリティロボット特区での屋外における運用の実証実験に参加しているというのもある)。また、未来館のすぐ近所にあるトヨタの無料自動車展示・体験施設「MEGA WEB」において、Wingletは集客用の体験型コンテンツの1つとなっているので、未来館でも乗れるようになるというのはなかなか難しいとは思うのだが。

しかし、パーソナルモビリティを普及させるという意味では、両者とも共通の目標として協力できると思うので、腰掛け座乗型と立乗型の向き不向きなどを検証するためにも、ぜひ共同で運用してもらいたいところである(実際、小橋氏もトヨタのパーソナルモビリティの開発スタッフとは面識があり、お互いに普及のために協力できることがあったらしましょうという話はしているそうである)。

というわけで、これからのパーソナルモビリティの普及を占う重要な商用サービスについてと、UNI-CUBβの搭乗した感想のリポート、いかがだっただろうか。UNI-CUBβに搭乗してみたい人は、平日の午前中が狙い目だ。条件さえ満たせば誰でも乗れるので、ぜひ興味のある人は体験してもらって、あの爽快感や生物的な不思議な感覚などを味わってみてほしい。