10月17日、日本国内の報道関係者向けに行われたアップルのハンズオンイベントにて、同日より出荷開始となったiMac Retina 5Kディスプレイモデルが展示された。5,120 × 2,880ピクセルという広大なピクセルの海には、実際に見なくては分からない生々しさが溢れていた。
画面を見ている気がしない没入感
27インチという画面サイズ自体が、目の前に座った時に視界を覆うのにはすでに十分だが、そこに詰め込まれたピクセル数は1,470万。もう液晶画面を見ている気が全くしない。紙ともポジフィルムとも違う、繊細で広大でぬるんとした何かだ。
iPhone 4で初めてRetinaディスプレイが登場した時、その解像度が人間の網膜を上回るもの、つまり理論的には人の目にピクセルが見えないものと謳われていた。確かに、Retinaディスプレイ搭載のiPhoneやiPadを使っていて、ピクセルのある液晶画面のように感じることは全くない。しかし、このiMac Retina 5Kディスプレイモデルはその感覚を簡単に過去のものへと置き去りにする。網膜レベルでは画面と現実の区別がついていない視覚信号を、脳で補正してディスプレイ上の映像だと理解しているような感覚だ。
エッジを極力薄くしたことで、大きいが軽やかなデザインに |
背面のインターフェースはSDXCカードスロット×1、USB 3.0×4、Thunderbolt 2×2、ギガビットEthernet×1、オーディオ出力×1 |
iMac Retina 5Kディスプレイモデルでは、単体で1,470万ピクセルを駆動する独自設計のタイミングコントローラを搭載。ピクセル数を増やしながらも表示品質向上と消費電力低減を実現し、新しい光配向プロセスと補償フィルムによってどの視野角でも締まった黒と鮮やかな色を見ることができる。地デジ切り替えで液晶テレビ特需があった頃、液晶画面の隅々までムラなく鮮やかに表示させるにはいかに高い技術が必要なのかがよく宣伝されていたが、iMacはピクセル数でいえばその7倍の数を制御していることになる。
5Kだからできること
Retina 5Kディスプレイは、映像業界で需要が高まる4Kよりさらに大きいことになる。4から5なら従来の2割増しかと思うとそうではなく、4Kディスプレイよりもピクセル数は67%も多い。4Kではなく5K。その利点がもっともよく分かるのが、動画編集ソフトの編集画面だ。
5Kの画面であれば、4Kの映像を原寸で表示させながらメニューやタイムラインを同時の同じ画面上で操作することができるのだ。しかもこの解像度の高さにより、タイムラインのサムネイルもメニューの文字も、隅々までくっきりと見える。サブディスプレイを用意する必要はない。3.5GHzクアッドコアIntel Core i5、AMD Radeon R9 M290Xグラフィックス、8GBメモリと1TB Fusion Drive標準搭載というスペックが、4K動画の編集も可能なパワーを支えている。
しかしこのiMacの本当の進化の意味は、「普通に」写真やブラウザを見ている時に感じられるものなのかもしれない。実際に目の前で見て初めて感じた文字や写真の実在感は、今まで体験したことのなかったものだ。データを可視化して表示するためのツールだったディスプレイが、人間の感覚限界を超えて進化することで逆にその存在感を消し、データを自分の目で直接見ているような気にさせる。これを見ればWebであれ動画であれ、自ずと作るもののクオリティにこだわらざるを得ない。クリエイティビティが詰め込まれたという意味では、非常にMacらしい進化の形と言えるだろう。