ここまで見てきて、そろそろ「ある方向」について触れてみよう。とは言いつつ、それが何だか、なんとなく提示してきたつもりではあるのだが。
今回のiOS含めたアップデートで気になる点は、スペックでは説明しきれない、測ることができない特徴が増えたところだ。形状にしても、ディスプレイの見え方にしても、問題になるのは「質感」であって、数値ではない。Focus Pixelや光学式手振れ補正にしても、テキストで解説するより、実機に触ってみて初めてその実力が分かるという質的なものなのである。iPhone含め、ここ何年か、スマートフォンは、スペック/機能面において似たり寄ったりなものとなり、どれをとっても代わり映えがないという傾向が続いていた。特にAndroid端末では、何選んでもほぼ同じという状況だ。アップルはそこで、早い段階でスペック競争から降りた、という印象を受けるのだ。画面の大きさこそ、最近主流のサイズになってきてはいるものの、カメラの解像度は、これで充分でしょ?という仕様にとどめているし、4K動画にも手をつけていない。それより、Appleが求めたのはユーザーエクスペリエンスの向上だったのである。それは、iPhone本体、iOSだけでなく、「Apple Pay」という新サービスにも表れている。クレジットカードの利用が、より簡単になるだけでなく、安全に使えるようになる。また、Apple Payでは、消費者が手数料を負担することはないそうだ。代わってクレジットカードを発行する銀行がそれを負担するという話である(この件はBloombergなどが報じている)。