さて、写真甲子園は高校生3人で1つのチームをつくり、組写真で競い合うスタイルを継続しているが、「初戦」と「本戦」はまったくの別物といえるほど、競技の性格が大きく異なる。まずその違いについてふれておきたい。

撮って出しの8枚組作品で競う「本戦」

初戦と本戦の違いでとりわけ大きいのが、作品づくりにかけられる「時間」、「撮影のシチュエーション」、お題として与えられる「テーマの有無」の3点だ。

初戦の応募期間は3月下旬から6月初旬まで、それ以前より撮影することも可能なので、たっぷり時間をかけて作品を仕上げることができる。そして、初戦ではテーマの指定がないため、被写体や題材などを自由に選べる。いつ、どこで、誰を、どのように撮ってもいい訳だ。

帝塚山学院高校の初戦提出作品『止まらない時間~青い春の終わり~』

それに対して本戦は、出場校の選手たちと監督が東川町に集結して行われる。撮影できる場所や時間にある程度の制限があり、セレクトから作品提出までの時間も決められている。バス移動による撮影タイムは2時間(※)。セレクト開始から2時間10分で作品を提出しなければならない。 ※最終日を除く。宿泊先や移動中など空き時間でも撮影可。

また、本戦では3日間の各ステージごとにテーマが定められ、それに添った作品づくりが求められる。しかも、テーマは開会式直前のオリエンテーションではじめて知らされる。今大会で出題されたテーマは、ファーストステージが「北海道」、セカンドステージが「夏」、ファイナルステージが「ときめき」だ。

さらに、本戦では写真データをパソコンで編集することが不可となっている。色や明るさの調整はもちろん、トリミングも禁止。「撮って出し」で8枚の組写真を構成することが求められる。

このように競技概要を書いていくと、勝利至上主義の猛者が争うイベントのように思われるかもしれないが、現場ではそこまでギスギスと追い込まれた様子は感じられない。「勝負」の要素があるのは確かだが、選手の自主性を尊重する監督、大会を楽しんでいる選手たちが多かったように思う。運営スタッフやボランティア、東川町の人たちが、自然となごやかな雰囲気をつくっている好影響もあるのだろう。

キヤノンが選手たちに使用機材を提供。サポートカーが撮影フィールドを巡回し、トラブルにも対応してくれる

夕食の準備をする東川町のお母さんたち。写真モデルとしてのサービス精神もバッチリだ。東川町は「写真の町」を宣言して30年とあって、撮影に好意的な人が多いようだ