レノボ・ジャパンは6日、同社の10.1型タブレットPC「ThinkPad 10」に関する技術説明会を開催。レノボ・ジャパン 大和研究所 タブレット開発 部長 加藤敬幸が「ThinkPad 10」に込められた開発エンジニアのこだわりを紹介した。
レノボ・ジャパン 大和研究所 タブレット開発 部長 加藤敬幸が「ThinkPad 10」 |
「ThinkPad 10」は、2014年7月に日本国内向けの販売が発表された10.1型タブレットPC。10.1型WUXGA(1,920×1,200ドット)の高解像度ディスプレイのほか、SoCにBay Trail世代の最上位モデル「Atom Z3795」を搭載するハイスペックなモデルとなっている。 加藤氏は「ThinkPad 10」の開発にあたって、「いつでもどこでも仕事に便利」な製品を目指したという。「いつでもどこでも」とは、外出先だけでなく自宅やオフィスを含めた環境のことで、そのために重要な要素として、携帯性と堅牢性の両立や、仕事をこなせるパフォーマンスと使いやすさ、Windowsプラットフォーム、豊富なアクセサリ群を挙げる。
従来モデルからさらに薄く
ThinkPadブランドの10.1型タブレットでは、2012年10月発売の「ThinkPad Tablet 2」があるが、「ThinkPad 10」は「ThinkPad Tablet 2」と比べて0.85mmの薄型化を実現した。数字で見るとわずかに思えるが、「ThinkPad Tablet 2」の薄さが9.8mmと薄型であり、そこからさらに薄型化するには大きな工夫が必要だ。
「ThinkPad 10」は、背面のカバーを従来のプラスチックからアルミニウムに変更したほか、LCDモジュールとディスプレイ部のGorilla Glassの厚みを減らすことにより、薄型化に成功した。
筐体は薄型化してもThinkPadらしさともいうべき堅牢性は維持しなければならない。内部にノートPCでも使われるマグネシウム製のフレームを配置し、LCDやベゼルと合わせた構造とすることで強化している。ThinkPadではおなじみの過酷なトーチャーテスト(拷問テスト)ももちろんクリアしている。
また、筐体が薄型化するとUSBポートといったコネクタ部周辺にかかる力が大きく、その部分の筐体が破損してしまうことがあるそうだ。それを防ぐためにポートの上にメタルブラケットを乗せて、コネクタ部周辺を補強するなど、使いやすさにこだわっている。
このほか、海外向けなどのLTE対応モデルでは、新規アンテナの採用やRFマッチング回路の最適化で、ワイヤレスアンテナ部分子方を行ったという。
Bay Trai採用で大きく向上したパフォーマンス
パフォーマンス面では、Bay Trail世代の最上位モデル「Intel Atom Z3795」によって、Intel Atom Z2760と採用した「ThinkPad Tablet 2」と比較して、システムパフォーマンスで2倍、グラフィックスパフォーマンスで4.5倍と大きく向上した。
ディスプレイも同じ10.1型ながら、解像度は1,366×768ドットから1,920×1,080ドットに拡大。一方で高効率・低消費電力のLEDバックライトにより、10時間を超えるバッテリ駆動時間となっている。
使いやすさへのこだわり
デジタイザーペンは、従来の6.5mmから8mmへ太くなりもちやすくなった。本体が薄型化したため、ペンの収納スペースがなくなってしまったが、使いやすさとのトレードオフで、あえてペンを細くしなかったという。
また、デジタイザはディスプレイの周辺部では、認識する精度が落ちてしまうが、ディスプレイの端でも直進性や追従性を向上すべく、チューニングを重ねたとしている。
豊富なアクセサリ
ThinkPadといえば豊富な周辺機器のラインナップも特徴だ。ThinkPad 10でもさまざまなアクセサリをそろえる。
クイックショット・カバーは、8型タブレットThinkPad 8でも提供するものと同様に、カバーの端を折り曲げることでレンズが露出すると自動的にカメラアプリを立ち上げることができる。また、ペンの収納スペースを備えるほか、スタンドとしても活用できる。
キーボードは2種類用意する。1つはタブレットケースにタッチセンサ式のキーボードとトラックパッドを搭載した「タッチケース」。もう1種類はクラムシェル式ノートPCのような形状で使うことができる「ウルトラブックキーボード」だ。
タッチケースはストローク感がほとんどなく、長時間の使用はちょっとつらそうだ。製品名の通り「ケース」としての位置付けがメインのように思う |
ウルトラブックキーボードは、ファンクションキーもあり、ある程度の使用に耐えうるキーボードのように感じる |
より携帯性を重要視する場合は「タッチケース」、コンテンツクリエイションを重要委する場合は「ウルトラブックキーボード」と、用途に合わせて選択できる。
どちらの製品もBluetoothに対応していない。これは企業で大量に導入した際に、1台1台ペアリングするのは大変といった理由によるものだという。また、ThinkPadの特徴としてあげられるトラックポイントも非搭載だが、トラックポイントを搭載するとセンサを入れるための厚みが必要となる。タブレットという製品ではモビリティが大事で、そのため薄さを優先し、トラックポイントの搭載を見送ったという。
インタフェースを拡張する「ThinkPad Tabletドック」は、背面に3基のUSB 3.0ポート、HDMI、ギガビット対応有線LAN、オーディオポートを備える。
ACアダプタのコネクタは専用のものへと改めた。従来製品ではMicroUSBで充電を行っていたが、長時間の充電が必要なうえ、コネクタの上下も間違いやすかったという。ACアダプタの変更により、5%~80%までの充電時間は3時間から1時間47分と大幅に短縮したという。
64bit OSもサポート
「ThinkPad 10」はBay Trail搭載タブレットとして初となる64bitのWindows OSをサポートする。企業のIT管理者からは通常のノートPCとタブレットで共通のOSイメージを利用したいという要望が挙げられていたという。
セキュリティ面では、指紋認証やスマートカードを使った認証といった認証システムが利用可能だ。また、暗号化機能BitLockerを利用した場合、OSが立ち上がる前にPINコードの入力が必要となるため、OSが起動する前の環境でもソフトウェアキーボードが利用できるといったサポートもレノボ側で行っている。
ThinkPadのデザインとその本質
加藤氏はThinkPadのインダストリアルデザインについても紹介した。「ThinkPadというと黒くて四角いこと、赤いトラックポイントを思い浮かべるかもしれないが、ThinkPadのデザインにおける本質は"シンプルで無駄のない外観"」だという。 めたり
「ThinkPad 10」では、本体の側面にわずかな傾斜を付けることで、机に置いた状態からでも持ち上げやすくした点や、使用頻度を考慮したコネクタの配置、本体の上下が判別しやすい「Dシェイプ」デザインを例に挙げ、使いやすさを軸にシンプルで無駄のない外見を目指したことを説明した。