甲府市の愛宕山にある山梨県立科学館(画像1)では7月19日から8月24日まで、「君は未来のメカニック 発進! ロボットコロニー」(画像2)という夏休み向けの特別有料展示を実施中だ(大人200円、3歳以上~高校生100円、0~2歳無料)。その中の目玉として、連日にわたって長蛇の列を作っているのが、元祖・搭乗型の大型2足ロボット「ランドウォーカー」を開発した榊原機械による、子ども向け搭乗型ロボット「キッズウォーカー サイクロプス」(画像3)の搭乗操作体験である。今回、ロボットコロニーの取材をし、筆者もサイクロプスに搭乗させてもらってきたので(実は狭いけど大人でも乗れ、今回の展示で大人は乗れないが、特別に取材ということで乗らせてもらった)、展示内容とサイクロプスについて紹介したい。

画像1(左):山梨県立科学館の入り口。甲府市からの標高差は数100mだが、徒歩で登るにはかなりいい運動になる愛宕山の中腹にあり、ウッドデッキなどからはとても見晴らしがいい。画像2(中):ロボットコロニーのポスター。画像3(右):サイクロプス。ロボットは数あれど、搭乗できるヒト型系の機体はそう多くはない

まずはロボットコロニーから。こちらは科学館の多目的ホールで行われており、各種新旧のロボットの静態展示や、ロボットサッカー(画像4)や虫ロボ体験操縦(画像5)、そしてMANOIパフォーマンスショー(画像6)や、ご当地ヒーローの「甲州戦記サクライザー」のヒーロー・サクライザーをロボット化した「ロボサクライザー」のデモンストレーション(画像7)、産業技術総合研究所で開発されたゴマフアザラシの赤ん坊の外見をした介護用ロボット「パロ」や、ホビー用恐竜型ロボット「PLEO」で遊べるといったことが可能な内容で、そのほかロボットの歴史が大きくまとめられていたり(画像8)、三菱重工の「wakamaru」が待つエントランスではタブレットを無償貸し出ししてくれ、エリア内の複数箇所でロボットに関連する動画のダウンロードをして閲覧できたり(画像9)、特別カードの配布なども行われている。

画像4(左):ロボットサッカー。コントローラでロボットを操縦できる年齢なら未就学児童でも楽しめる。画像5(中):神奈川工科大学 創造工学部ロボット・メカトロニクス学科の兵頭和人教授の研究室で開発されたシステムを用いて、スマホで虫ロボを操作。画像6(右):MANOI PF01によるラジオ体操第一。余裕がある時は、子どもたちにも一緒に楽しめる

画像7(左):こちらは、兵頭研で作られた大型のヒューマノイドロボット「ロボコロちゃん」の兄弟機のロボサクライザー。頭の飾りなどを入れると160cm強の身長でズシンズシン歩くので結構迫力がある。画像8(中):オートマタやからくり人形などから取り上げていて、ロボットの実機だけでなく、「鉄腕アトム」や「ガンダム」を初めとする多数のロボットアニメや、「ターミネーター」や「ロボコップ」などのハリウッド映画など、映像作品も紹介されていて非常に細かい。画像9(右):展示の流れに沿って移動していくと、複数箇所で動画マークがあり、タブレットをかざすと動画を見られる仕組み。

静態展示は入り口からすぐの「博士の部屋ゾーン」にあり、京商のホビー用2足歩行ロボット「MANOI PF01」の特別版が複数種類、相澤ロボットの「三郎くん」(普段は多摩六都科学館に展示されているが今回、ロボットコロニーのために特別出張:画像10)、村田製作所の「ムラタセイサクくん」と「ムラタセイコちゃん」(画像11)などだ。

また「コロシアムゾーン」にあるステージでのイベントでは、毎日、MANOIによるラジオ体操やAKB48の「フォーチュンクッキー」に合わせたダンスパフォーマンスショーやロボサクライザーのデモのほか、土日を中心にして(平日も一部は開催)抽選で選ばれた小学生16名によるロボットバトルトーナメント(1日3回:画像12)、ロボットプロレス「できんのか」(8/13・14、1日2回)、ROBO-ONE甲信越大会(8/15(予選)、16(決勝))なども行われる。

画像10(左):故・相澤次郎博士が作った通称「相澤ロボット」の1体である「三郎くん」。多摩六都科学館から出張してきた。画像11(中):自転車搭乗型ロボットのムラタセイサクくん(右)と一輪車搭乗型ロボットのムラタセイコちゃん。2機は従兄弟の関係。画像12(右):小学生ロボットバトルトーナメント。結構エキサイトする子もいて、応援もヒートすることしばしば。比較的11時の1回目か16時の3回目が少なめ

そのほか、ロボットコロニーのエリアである多目的ホールとは別の部屋を使って、身近なリサイクル素材で作る「くるくる☆ロボクラフト」(8/2)レゴ・マインドストームNXTを使った「ロボットを組み立て、パソコンで操縦しよう!」(8/10)、そのほか複数の日程で「じっくりロボ工作教室」といった工作教室も実施。要は、夏休みの間なら、何度も遊びに来られるようになっているというわけだ。

というわけで、続いては、榊原機械が開発した子ども向けに安全性を重視した設計の、実際に乗り込んで操縦できるロボット・サイクロプスを紹介しよう(画像13・14)。サイクロプスは全高2.07m、全幅1.7m、全長(前後厚)1.3m、重量は360kgというスペックで、子ども向けとはいえ、それなりのサイズを持つロボットだ(画像15)。転倒により搭乗している子どもがケガする可能性があるため、2足歩行は安全を考慮して採用されていないが、ヒューマノイドロボットとしては、現在稼働している機体の中ではトップ5に入る大きさだろう。

画像13(左):サイクロプスの勇姿。画像14(中):そのリアビュー。画像15(右):大きさがわかりにくいと思うので、筆者が乗ってみた。SD(スーパーデフォルメ)デザインなので小さく見えるかも知れないが、2m強あるので実は結構大きい

ちなみに、ロボットコロニーの設定では、イメージキャラクターの1人の「ロボット博士」(画像2のサイクロプスの左上青い飛行メカに乗った白髭メガネの老人)が作り、同じくキャラクターの1人の「カルロくん」(同じく画像2でサイクロプスに乗っている少年)が操縦する戦闘用ロボットだ(メカニックはガールフレンドのローラちゃん(同じく画像2の左下の少女)とその愛ロボット犬のペロ(画像2のローラちゃんの左))。悪のドクターZ(サイクロプスの右上のコーンヘッドで紫色の悪そうな人物)の作るロボットと戦うということになっている。

移動は、足裏に備えられた車輪で行う仕組みを採用しており、移動中は歩いているように見えるよう、脚部が前後に動く仕組みだ。移動に関する操作は、コックピットの足元にある2つのペダルを使用する(画像16)。車のペダルとは異なって、ペダルの真ん中に軸があり、つま先側とカカト側のどちらにも踏み込め、両方を同時につま先側に踏み込むと前進し、同じく同時にカカト側に踏み込むと後退。片側だけ踏み込むとそちらの側に旋回し、また超信地旋回(機体の中心を軸にした半径0mのその場での旋回)も可能で、例えば右のペダルをつま先側で踏み込み、左のペダルをカカト側で踏み込むと、右回りで超信地旋回を行う。

画像16。足元のペダルで移動系はすべて制御

そして腕部は左手がドリル(画像17)、右手がグリッパー(画像18)。腕部の操作に関してはマスター・スレーブ方式で、操縦桿(画像19)を握って上下左右に動かすと、アームがそのまま動く。子どもでも動かせる直感的な仕組みが採用されているというわけだ。

また操縦桿のグリップ部分は少し回転させられる仕組みで、それによってドリルの回転のオン・オフや、グリッパーの開閉を操作する。ちなみにドリルは鉄製だが、回転中は手ですぐ押さえられるほどトルクは低く設定されている。一方のグリッパーの挟み込む力も手で止められるし、何かを挟むとそこですぐ止まるので、手などが挟まれたとしても痛くはない。また子どもたちが走ってきて転んでドリルにちょうど目をぶつけてしまったなどといったことがないよう、体験操縦の時間帯以外の静態展示している時は、両腕とも上に向けるように安全性を考慮した運営がされている。

画像17(左):左手は男の憧れ(笑)ドリル。画像18(中):右手はグリッパー。画像19(右):操縦桿。メカニカル感むき出しでいかにもな感じだから、ロボット好き・メカ好きにはたまらない(笑)

そしてサイクロプスの材質だが、イスの座面や車輪などの一部を除けばスチール製で、曲げや溶接などを使って作られている。プラスチック製の外装を使う話もあったという。プラスチック製の場合、もっと艶が出るし、スチールで作るには難しいもっと複雑なデザインも採用できるが、万が一破損した場合、一品もののパーツのため(サイクロプスは実際には2機あるが)、パーツ交換の度に毎回部品の発注をしなければならず、それだと予算的な面でも時間的な面でもデメリットが大きいことから、一切プラスチック製の外装を使わないことにしたという。

それから動力源は、入手のしやすさを考慮して、バイク用の市販のバッテリが使われている(画像15の後方に置かれている白いハコ状のもの2つが予備のバッテリ)。故障した時にすぐかつ安価に修理できる、というものづくりのプロの目線で作られたのがサイクロプスというわけだ。

実際に乗ってみた感想としては、さすがに180cmオーバー・85kgオーバーの巨漢が乗り込むには、コックピット正面の装甲板を閉じてしまうとキツイのだが(画像20・21)、ヤワな作りではないので安心感がある。なんせ、自重が360kgもあるから、85kg程度が乗ってもそれほどでもないのだ。乗り込む際は、正面の装甲を前に倒すと、ちょうど乗り込むためのステップになる設計で、中には回転させて高さを調整できる丸イスが備えられているという具合だ(画像22)。

画像20(左):パイロットがかわいい女の子がよかったのだが、そう都合よくはいかないので、筆者で申し訳ないが、大人(巨漢)が座るとこの通りさすがにキツイ。画像21(中):正面の装甲を上げてコックピットを閉じたところを横から撮影。脚が特にキツく、ヒザが少々痛かった。画像22(右):シートはシンプルな丸い座面のイスで、左右に回転させて高さを調整できる

それにしても腕の操縦桿がとてもロボットアニメ的な操縦桿ぽくて、これを握ると、「サイクロプス、ゴー!」といいたくなる(笑)。もうちょっと移動速度が出るのなら、これで街乗りしたいぐらいだ(道交法的につくばモビリティロボット特区以外では走らせられないのだが)。40半ばのイケメンでも何でもないオッサンがパイロットで大変恐縮だが、サイクロプスを操作してみた様子の動画は以下の通り(なお筆者が乗っている時の動画、スチルは共に撮影をホビーロボット系ライターの第一人者の1人、梓みきお氏に務めていただいた)。

動画
サイクロプスの動作の様子。大人も楽しい(笑)

サイクロプスの体験操縦は1日3回、各回20名までで(例外として、1日2回、各10名という日もある)、3歳から小学6年生までが搭乗可能で、未就学児童は上半身のみの操作。なお、各回20名からもれてしまっても、サイクロプスはロボットコロニー内のコロシアムゾーンに静展示されているので、その間は子どもに限っては乗り込んでの記念撮影などは可能。お子さん・お孫さんのロボットに乗った勇姿を保護者の方は撮影できるというわけだ。

登場した子どもが移動させることもできるとなると、万が一暴走した時が怖いと思う保護者の方もいるかも知れないが、緊急停止ボタンがあるので問題なし。スタッフが常に複数名、何かあったら即ボタンを押せるよう機体のすぐそばについているので、機械的にも運営的にも問題ない。また未就学児童が誤ってペダルを踏んでも動き出したりしないよう、緊急停止ボタンのほかに上半身と下半身の動作のオン・オフを個別に行える仕組みにもなっている(画像23)。とにかく、安全設計が配慮されているのだ。

画像23。左肩の後方に緊急停止ボタンと、上半身・下半身別の動作スイッチがある

というわけで、ロボットコロニーとサイクロプスいかがだっただろうか。首都圏からも結構近くて、JR中央線や京王線などを使って特に特急などに乗らなくても新宿から甲府までおおよそ2時間半から3時間ほど。あずさなどの特急を使えば1時間半強で到着である。高速道路の場合、新宿に近い首都高4号新宿線の永福ICから乗ったとして、中央道の一宮御坂ICまでおよそ1時間から1時間半。山梨県立科学館までは2時間もあれば着く計算だ。

ただし、科学館の駐車場は台数が限られているので、特に土日に訪問する場合はJR甲府駅から出ている専用バスを利用するのがオススメ。9時から17時まで13時を除いて1時間ごとに毎時0分に出ている(逆に甲府駅行きは、9時30分から17時30分まで、13時30分を除く1時間ごと)。片道20分の肯定で、大人210円、子ども110円となっている(夏期は毎日運行)。マイカーの方も甲府駅周辺の有料駐車場に止めて、バスで行くのが、駐車場に入るための渋滞で待つのを回避できるはずだ。

何はともあれ、このサイクロプスがこれだけの長期間にわたって体験操縦できるイベントは榊原機械も今回が初めてということで、今年は乗れるチャンスが非常に高い。8月1日から24日までの計算としても、1日60人なので、1440人だ。ぜひ、お子さんにロボット操縦という滅多にできない体験をさせて上げてはいかがだろうか!