会場では実機を2台ずつ用意し、1台は炊飯用、1台は展示用として参加者が自由に触れるようにした。参加者は試食しながら、内釜の重さや持ちやすさを確かめたり、操作パネルに触れたりして、自分の気になるポイントをチェック。「フタを開けるボタンは前面より上面に配置してあるほうが操作しやすい」「本体にハンドルがあったほうが掃除しやすい」といった声が聞かれた。特に女性の参加者は内釜の使い勝手を気にする傾向にあった。

一台ずつ炊き上がりを確認

炊き上がったら上下を返すように混ぜて、10分ほど蒸らす

各社の炊飯器で炊いたご飯を同時に試食できるようにしたことで、「甘みや噛みごたえの違いが出ていて比較しやすかった」という意見も多かった。中には「同じ米を使ったと聞いて驚いた。米の種類が違うのかと思うくらい差が出ていた」との声も。料理人や評論家ではない一般の人にとって、ご飯の味を覚えておくのは意外に難しい。同時に食べ比べたことで、ご飯の味の違いが際立って評価しやすくなったといえる。

「おいしさ」の評価は人によって大きく分かれた。好みの違いがそのまま評価の違いにつながっており、製品の優劣は付けがたい。参加者からは「自分の好みでない製品が他の人からは高く評価されているとちょっと驚いたが、それによって自分の好みを客観的に把握できた」という声も上がった。

会場にはおかずとして、塩辛、梅干し、ドライカレー、ちりめん山椒、辛子明太子、海苔、ぬか漬けのほか、肉や野菜のグリルなども用意。「ご飯だけ食べる場合と、おかずと一緒に食べる場合で、ご飯に求めるおいしさが異なることに気づけた」との声もあった。

茶碗とはしでご飯やおかずを試食してもらった

茶碗によそうだけでなくおにぎりも

以下、各社の製品について、参加者と炊飯担当スタッフの声をまとめる(50音順)。

シャープ「ヘルシオ炊飯器 KS-PX10B」

炊き上がった時のご飯粒が大きくなっているのが分かるほど、水気が多くしっとりしているという意見が多く、柔らかいご飯が好きな人からの評価が良かった。一昨年に炊飯器市場に再参入したばかりなこともあって、まだブランドとして未完成な印象だ。例えば洗米機能のようなユニークな機能に磨きをかければ、他社との差別化が図れるのではないだろうか。水の透明度や温度を計るセンサーを搭載して、水を替える残り回数を指示するといった機能まであると良さそう。

象印マホービン「南部鉄器極め羽釜 NP-WT10」

柔らかめのご飯が好きな人からの支持が高かった。おこげが作れて風味が良いとの声も。おいしさの秘密でもある内釜の重さで評価が分かれた。また、内釜の口が広がっているため、米研ぎ時にはこぼれやすい。かまど炊きを再現する「かまど極め」メニューだと、食感を選べない点が気になるところで、「しゃっきり」や「もちもち」などの選択ができると評価は上がりそうだ。圧力を抜く際の大きな音が気になるという声もあった。

東芝「備長炭 本丸鉄釜 RC-10VPH」

粒立ちがはっきりしており、ふわっとした印象が強い。内釜の上部がややすぼまっており、米研ぎはしやすい。設定が少々分かりにくく、取扱説明書を読まないと迷う場面もあった。おかずと一緒に食べたときにおいしいとの声が多かった。

パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX104」

多くの参加者が比較的高得点を付けた。内釜が軽く、米研ぎを楽に行えるのは高評価だ。操作ボタンの名称が分かりやすく見やすい。また、デザインの評価も高い。簡単に設定できるコースと、細かく設定できるコースに分かれていて、使い方が選べる印象だ。ただ、炊飯時の音が最も大きかった。

日立「打込鉄釜ふっくら御膳 RX-VW3000M」

好みが一番分かれた製品だ。やや硬めのご飯が好きな人からの支持が高い。蒸気レスのため、炊飯時の音が静かなのもポイント。パーツが少ないので手入れも楽に行える。操作ボタンは文字が読みやすく、分かりやすい。あまり考えずに直感的な操作ができるので、シニアや男性からも評価が高い。

三菱電機「蒸気レスIH極厚本炭釜 NJ-XW105」

今回、ベストに選んだ人が最も多かったモデル。米の甘みが出ていたという声が多かった。蒸気レスにより、炊飯時は本当に静かだ。ただし、洗うパーツの数が最多で、蒸気レスを実現するためにタンクの水を毎回取り替える必要があるなど、手入れの面でマイナス評価も聞かれた。内釜は見た目よりも軽くて扱いやすい。

非常にざっくりまとめると、柔らかめが好きな人はシャープや象印、硬めが好きな人は日立、粒立ち重視は東芝、甘み重視は三菱、バランス重視ならパナソニックといったところか。

内釜の重量や操作のしやすさを興味津々でチェック

会場のあちこちで意見交換が活発に行われていた

炊飯器を選ぶのは難しい。米の銘柄によっておいしい炊き方が異なっていたり、米の研ぎ方や水加減で炊き上がりが変わったり、一緒に食べるおかずによって理想の炊き方が異なっていたりするからだ。自分の好みを見極めて、好みに合ったご飯を炊ける製品を探すのが満足のいく炊飯器選びのポイントとなる。また、選んで購入した製品をいかに使いこなして自分好みのご飯を追求していくか、ということも重要だ。一緒に食べるおかずやその日の天気、一緒に食べる相手の好みまで考えて、ご飯を炊き分ける工夫ができるところも、高級炊飯器の大きな魅力といえるだろう。