携帯電話のネットワークが高速化している。理論値ではあるが、下り速度は最大で150Mbpsに達し、固定の光回線並みの速度となっている。海外では200Mbps強のサービスも開始され始めており、携帯ネットワークがどんどん高速化している。

今年の夏モデルから、KDDIが開始した「キャリアアグリゲーション(以下、CA)」も、携帯ネットワークの高速化技術だ。その技術の特徴を簡単に紹介する。

KDDIが4月21日に公開したキャリアアグリゲーションの概略図

キャリアアグリゲーションってどんな技術?

キャリアアグリゲーションは、携帯電話関連の規格を策定している「3GPP」が定めた広帯域通信のための仕様だ。もともとは現行のLTEの拡張規格である「LTE-Advanced」のための技術だったが、これがLTEでも実現できるようになった。

CAは、LTE Rel.10(Release 10)で3GPPの規格として盛り込まれた。この技術は、例えるならば「水の流れるパイプが、今まで1本だったのが2本になり、1つのバケツを満杯にするスピードが上がる」「東名高速道路に加えて新東名高速道路ができたので、同じ目的地に対して一度に走れる車の量が増える」というもの。例えに出したパイプや高速道路は、ここではデータを送信する電波に相当する。LTEの道路の幅(搬送波)は5MHzごとになっており、5MHz幅だと下り最大37.5Mbpsという理論値になる。10MHz幅(2車線)なら75Mbps、15MHz幅なら112.5Mbps、20MHz幅なら150Mbps……といった具合だ。

この搬送波が「キャリア」だ。アグリゲーションは「集約」といった意味で、搬送波を集約し、1つの搬送波に見立ててデータを送信する技術、というのがCAとなる。

通常、周波数は連続して隣り合ったものを搬送波として利用する。連続した周波数で下り速度150Mbpsを実現するには20MHz分を確保しなければならないが、携帯事業者に割り当てられる周波数は有限で、20MHz幅を確保できるとは限らない。また、LTEの仕様上は20MHz幅までが規定されており、逆に言うと「40MHz幅を使って下り300Mbps」といった使い方は想定されておらず、将来的にさらなる増速化が難しい。

CAでは、周波数が連続している必要がない。これまでは「800MHz帯の連続した20MHz幅」といったように、同じ周波数帯である必要があったが、CAでは別の周波数同士を1つの搬送波として見立てることも可能になっている。

例えば国内で先行するKDDIは、800MHz帯と2.1GHz帯の2種類、それぞれ10MHz幅ずつをCA用に使い、下り最大150Mbpsを実現している。速度としては、NTTドコモも一部で下り最大150Mbpsサービスを提供しているし、KDDIも同様に下り150Mbpsのエリアがあるが、これは連続した20MHz幅を使っており、CAではない。

周波数利用効率の向上などのメリットも

CAは単に高速化するだけでなく、それ以外のメリットもある。複数の周波数を使うため、一方の電波状況が悪化しても、もう一方の通信でカバーできる。速度は落ちるが、1つの周波数での通信よりも安定性の向上が期待できる。2つの周波数のうち、空いている方をユーザーに割り当てると言った効率的な運用も可能になり、周波数利用効率が良くなる、というメリットもあるとされる。

通信速度と安定性、利用効率という3点が、CAの主なメリットだ。通信の高速化は、場所によっては劇的な効果があるかもしれないし、時と場所によって変動するものなので、常に高速化・安定化が実現できるとは限らないが、全体としては、これまでよりも通信速度が高速化することが期待できる。

さらにCAは、最大5つの搬送波をまとめることができるため、20MHz幅×5=100MHz幅まで利用できる。単純に言えば最大速度750Mbpsが実現できると言うことになる。これに加えて、MIMOの拡張で下り最大1Gbpsを超える速度がターゲットとされているが、ここまでくると規格としてはLTE-Advancedになる。ちなみに、LTE-Advancedでも20MHz幅が基準となっているのは、LTEの仕様にあわせたようだ。

KDDIでは、CAのカバーエリアを公表していないが、CA対応は基地局のバージョンアップをする必要があり、順次対応エリアを拡大している。ドコモも年度内にはCAを開始する予定。その後LTE-Advancedへと進化していくことで、携帯の通信速度はギガビットクラスへ拡張されていくことになる。