実際に保育園で活用されているオープントイレ

続いて、エリア2「きみはトイレで何してる?」。本来、説明するまでもないがトイレは排泄を行うための場である。が、特にうんちの場合、今はほとんど洋式なので座るとちょっと落ち着いてしまうから、スマホをいじったり本を読む人も多いだろう。ほかにも、よくマンガ家や作家などもトイレでアイディアが出てくることが多いから、ちょっとした書斎になっている人もいる、なんて話も聞く。そんなわけで、ここでは男性専用だがゲームになっているトイレ(さすがにその場でリアルには試せない)とか、保育園や幼稚園向けのオープントイレという考え方で作られたトイレが紹介されている。

ちなみにこのオープントイレ、教室とトイレがシームレスになっていて、友達と会話しながら用を足せる作りになっている。トイレというと、どうしても「狭い」、「暗い」、「ひとりぼっちで寂しい」として、その結果「怖いから1人で行くのがイヤ」と幼児たちはなりがち。しかしこのオープントイレは、明るくて遊び場の延長という構造になっているので、前向きに洋式便器にしゃがんだ時に目の前が開いていて、友達とも話を続けられるので、孤独感なしに用を足せるというわけだ(臭いの問題はあるかも知れないので、そこは消臭スプレーなどで工夫する必要がある)。これは、実際に大阪府立おおわだ保育園に設置されているトイレで、これはぜひ日本中の保育園や幼稚園で真似をしてほしいと思うところである(画像13・14)。

画像13・画像14:施設を改装工事するのも大変なので、改装工事する際には併せて、ぜひ園の子供用トイレをオープントイレにしてはいかがだろうか?

巨大トイレを模したすべり台で下水処理の仕組みを学ぶ

そしてエリア3「うんちはどこへいくんだろう?」。ここは、子供たちは大喜びで楽しめるエリアだ。ここでは、画像15・16にある通りにうんち帽子を貸してもらえるので、それをかぶって(残念ながら未来館ショップでは販売していない)、画像1にある通りに巨大洋式トイレの外見をしたすべり台で、自らがうんちとなって流れていくのである。下水道を通って浄水施設に入ってそして海へ。なお、ただどこを通っていくのかという話だけでなく、雨が降ると下水処理が間に合わなくなって海に栄養分が多量の流れ込み、特にリンは赤潮を発生させてしまうというところも再現されているのである。

ちなみに子供たちだけでなく、大人も楽しめる。実際、40半ばのいいオッサンの182cm・87kgの、一見すると柔道とかやっていそうな体格の筆者も楽しんで滑った。ちなみに、ほかのメディアもいっぱいいる内覧会ながら、喜んで滑るいい大人はあまりいなかったようで、楽しそうな姿を他メディアにもバシャバシャ撮られた(笑)。

画像15(左):うんち帽子の山。ぜひグッズ化してほしいのだが…。画像16(右):実際に被って滑ってみたの図。保護者の方も一緒に被ってお子さんと共に滑ってみよう! 恥ずかしいなどと思う必要はナッシング!

話は戻って、先程の雨が降った時に発生する赤潮にも関連する話が、このエリアでは解説されている。うんちというと、食べ物の残りかすで、ヒトが消化できない食物繊維ぐらいしか残っていないような、役立たずの汚いもの、というイメージが普通だが、実はまだまだ資源が含まれているのだ。

特に回収技術の研究が重視されているのが、リン。窒素、リン、カリウムというと、農業における三大肥料である。下水にはうんちや尿以外といったヒト由来以外のものも含まれるわけだが(台所排水や雨水、工業廃水など)、リンは輸入した内の約50%が流入しているという。リンは日本では原料となるリン鉱石を100%海外から輸入しており、しかもリン鉱石は今後約100年で枯渇すると推測されている。よって、垂れ流しに近い状況であり、海に多量に流れ込めば赤潮の原因にもなるリンの回収技術の開発は、自然への負荷を減らせ、サステイナブル社会を実現するために必要な要素の1つとして喫緊の課題というわけだ。

なお岐阜市では、すでに下水汚泥の焼却灰からリン酸肥料を生み出す取り組みを2010年から実施しており、毎日約13万tの下水を処理し、そこから1日当たり約600kgのリン酸肥料が回収しているという。地元の農協や肥料メーカー向けに販売されているという具合で、もっと処理量の多い東京を中心とした首都圏や、大阪を中心とした関西圏など、大都市ではさらに回収できる量が増えるはずで、有効活用してほしいところである。ただ、回収率をアップさせたり、コストを低下させたりすることも課題のようで、現状は「輸入した方が安い」となってしまっているため、実証実験は続けられているものの、大都市圏での大規模な導入には至っていない。

そのほか、赤潮を発生させないため、つまり大雨が降った時、処理能力以上の下水が処理センターに流れ込んであふれ出てしまうのを防ぐためにどうしたら良いかという、下水道の課題などもここでは学ぶことが可能だ。リンの回収技術といい、ここは少し難しい技術的な話なので、お子さんと来られた方は、ぜひご自身でまずはしっかり読んでもらって、その上でお子さんにもかみ砕いて話してあげて、家族で意見交換してみてほしい。