動画変換には最新のCPUを

まず、比較してみたいのが、従来とH.264との比較である。H.265同様に、形式をH.264 AVC、解像度を1280×720、ビットレートはデフォルトの6Mbpsで、コンバートを行った。この2つを比較すると、次のようになった。

  • H.265:ファイルサイズ26.3MB、変換時間7分43秒
  • H.264:ファイルサイズ49.8MB、変換時間2分6秒

まず、ファイルサイズであるが、H.264の約半分となった。このあたりは、H.265でいわれるような圧縮率を達成していることがわかる。そして、時間であるが、3倍以上かかっている。これもよくいわれることであるが、計算量もH.264の倍以上という結果を証明するものとなった。また、画質補正によっても大きく変化する。TrueTheater Denoise補正をオンにした場合、倍以上の時間がかかった。そして、両者の差もやや均衡してきた。本来ならば、すべての画質補正をオフで比較するとよいだろう(TrueTheater Lighting補正は、それほど重たくない処理なので、影響は少ないと思われる)。

上述したように、コンバートを行ったPCは非力なものである。そこで、Mac mini(MC387J/A [2012年秋モデル])のBootCamp環境で行ってみた。スペックであるが、以下の通りである。

  • Intel Core i5 2.5GHz(i5-3210M)
  • 16GB RAM
  • Intel HD Graphics 4000

CPUの開発コードは、Ivy Bridgeである。TDPがかなり抑えられている分、動作クロックも低い。先ほどのPCと0.1GHzしか変わらない。

図21 BootCamp環境でコンバート中

こちらでは、Intel Quick Sync Videoが利用されているのがわかる。そして、結果であるが3分16秒であった。動作クロック数ではほとんど差がないが、半分以下に短縮している。i5-3210Mは2コア4スレッドで、Core 2 Duoは2コア2スレッドである。スレッドが倍になった分、コンバート時間も半分になったという見方もできる。いずれにしても、動画変換にはCPUパワーはあればあるだけうれしいということだ。MediaEspresso 7も高速化への対応が行われているので、相乗効果が期待できるだろう。

本稿執筆時点、IntelからDevil's Canyon(Core i7-4790K)がリリースされた。定格で4GHzという動作クロック数、そして、Haswellで追加された最新技術などでより高速なコンバートが期待できる。実は、現在、購入準備中である。本稿の執筆に間に合わなかったことが、多少、悔やまれるところだ。最新とまでいかなくても、1年くらい前のCPUならば、十分快適なコンバート環境となるだろう。

Windows 8では、動画プレーヤーの多くがH.265をサポートするようになってきた。再生だけならば、さほどCPUパワーも必要ない。手持ちの動画データをH.265にコンバートすることで、HDDの消費量を半分にすることもできる。時間はかかるかもしれないが、かなり魅力的である。

一方、モバイルデバイスでは、現時点では今後というところであろう。しかし、まちがいなく普及していくと思われる。本稿執筆時点であるが、Docomoのスマートフォンが対応を予定している(2014年夏モデル)。デバイスではないが、動画サイトのニコニコ動画もH.265の配信を発表した(こちらも2014年夏くらいだ)。トラフィックの緩和が、大きな目的である。徐々に、利用機会が増えていくだろう。MediaEspresso 7は、価格も比較的低く抑えられている。サイバーリンクでは、30日間利用可能な体験版も提供している。興味を持たれたのであれば、試してみていただきたい。